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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第40回
2020.08.28

現象は原因の半年以降に現れる

2020年の経済におけるもっとも重要なファクターは、言うまでもなく新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大でしょう。このコラムでも、コロナ禍の人材ビジネスの動向や、働き方への影響について、また私たちの専門分野である雇用に関して、見解を述べていきたいと思います。
 
思い起こせば、経済分野のみにとどまらない大きな出来事として、今から12年前の2008年9月に起きたリーマンショックがあります。今回のコロナショックを目の当たりにして同じような事態と考える方も多いことでしょう。しかし、リーマンショックとコロナショックでは基本的に構造が異なっています。すなわちリーマンショックというのは金融不安が実体経済に飛び火したもの。今回のコロナショックは構造不況であって、実体経済が止まったことで起きています。ですから同じように語ることができない部分もあります。これについての論評は経済の専門家に譲りますが、私は人事、雇用分野に従事している専門家として指摘しておきたいことがあります。
 
不景気が雇用に与える影響については、たとえ原因が異なっていても、同じ動きをすることが多いと感じています。それは、経営における「現象」は「原因」から半年経過以降に現れる、雇用においても同様だということです。
 
そのカラクリを具体的に申し上げましょう。新聞や経済誌などでは上場企業の四半期決算が続々と発表され、今のところ業績は堅調に推移しています。ただし業界ごとの差が激しく、飲食関係や旅行関係にはコロナ禍の大きな影響が出ています。またこうした不況の際に特需が発生する業界もあります。コロナ禍でも食品のテイクアウトやデリバリーに追い風が吹いたことは記憶に新しいところです。
 
読者のみなさまも、ご近所の飲食店が廃業に追い込まれるなど、コロナ禍で日常的に起きていることと較べ、主要企業の業績、ITや新興企業の業績が思いのほか堅調であることに不思議な感じを受けているのではないでしょうか。
 
水面下で本当は何が起きているのでしょうか。実は現在発表されている四半期決算は、昨年冬の仕込みの収穫期にあたるものが大部分を占めています。ですから全体的には3月以降の業績悪化で、今年の秋以降の減速感はかなりのものになると予想しています。つまりコロナ禍の業績は、今のところ表に出ない現実として「期ずれ」を起こしているだけなのです。そうなると次の決算は大きく落ち込んでくるはずです。日本では12月や3月の決算が多いので、ここを注視していかねばなりません。
 
大企業でも経営企画部門や財務部門が来期以降の予算編成についてシビアな算定をはじめているという情報が耳に入っています。ムダな支出を省くなど、かなり委縮した動きを見せているようなので、この秋から冬にかけて著しい減退感が出てくることが予測されます。
 
雇用についても業績の発表から半年ほど後に影響が出てくることが多いため、これまで堅調だった人材市場もこれから影響を受けはじめると思われます。今回のコロナ禍について「先の見通しが立たないことが最大の問題」と語る経営者が多く、社会に蔓延する不安感を警戒しています。モノが売れない→製造が止まる→人件費や設備投資を抑えるという負のスパイラルになれば、企業は余剰人員を抱えることになり、今年の秋以降、大規模なリストラをはじめる可能性が高いと思われます。
 
経済分野で大きなショックがあった場合、企業経営では6か月経過以降にその影響が表面化することを念頭に置いておくことが重要です。私が「現象は原因の半年以降に現れる」と申し上げるのはこのことで、これは人材市場や雇用についても通用する原則です。今年の秋以降、動向を注視したいと思います。