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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第41回
2020.09.04

コロナ禍に聞こえる企業経営者のホンネ

新型コロナウイルス感染症が日本で最初に紹介されたのは、厚生労働省が2020年1月6日にリリースした「中国武漢市で原因不明の肺炎が発生」という情報でした。その後、あっという間に感染が広がり、現在も収束には至っていません。
 
私は3月に「緊急事態宣言」が出てから、水面下で多くの企業経営者と面談し、情報交換を密にしました。その頃は経営者も浮き足立っていて、今後どうなるかわからないとオロオロしていた印象です。ウイルスのこと、感染経路のこと、有効な治療法などがわからないので経営者としても不安が募る一方だったと思います。
 
しかし5月のゴールデンウイーク以降になると、事態がやや落ち着いたせいか、経営者の間からコロナ禍で感じたホンネが聞こえはじめました。やや不謹慎な表現ですが「コロナ対応の過程で獲得した最大の収穫」についてでした。それは「どの人材が必要で、どの人材が不要か、はっきりわかった」ということでした。不思議なことに面談した多くの経営者が同じことを言いました。それぞれ表現や言い回しに違いはあるものの、異口同音にホンネを語ってくれたのです。
 
コロナ対応で注目されたのは在宅勤務、リモートワークでした。これを積極的に推進した経営者もいれば、懐疑的に見ている経営者もいました。ある調査によると、100人の社員がいたとして、その10%はリモートワークで効率化が進み、業績を向上させたそうです。また60%はリモートワーク前よりもパフォーマンスとモチベーションが悪化したとのこと。そして残りの30%は著しいローパフォーマーになってしまったそうです。
 
リモートワークについて「通勤時間が要らないから効率的」と社員は言いますが、それに対して「そんなことはない。9:00から17:00まで自宅の机で仕事に集中しているとは思えない。人にはサボりぐせがあり、監視が行き届かなければパフォーマンスが低下するに決まっている」というのが経営者の平均的な考えです。
 
リモートワークを採用すると定性評価(積極性や協調性などの数値に表せない評価)が排除され、定量評価(数値をもとにした評価)が徹底されます。この観点から見るとコロナ対応の先には厳しいリストラが待っていることが考えられます。私がインタビューした約40名の経営者たちは、みな同じことを言いました。それは「定量評価が低い社員は切る」というものでした。余剰人員を削減する、配置転換する、その大義名分化をコロナ第一波の6か月で探していたのです。第二次世界大戦でアメリカが対日参戦の口実を探したように、経営者は虎視眈々と社員を見据えていたのです。コロナ後のビジネスシーンでは組織に対する犠牲的精神や献身的貢献のようなものが、在宅勤務やリモートワークの導入で意味を失い、もはや数値でしか評価されなくなります。
 
日本では阪神・淡路大震災や東日本大震災の後、一刻も早く復興させて日本を元気にしようという熱のようなものが感じられました。ところが今回のコロナ禍では「みんなでおとなしくしていましょう」という静けさを感じます。すぐにコロナ禍を収束させ、経済を回し、日本を立て直さなければいけない!という危機感を強く持って動く人々が少ないように思えるのです。
 
経営者が在宅勤務やリモートワークを激しく嫌悪しているわけではありませんが、コロナ禍が長期化することで社員のロイヤリティーやモチベーションが低下することを危惧しています。給料は変わらずに業務量が減り、感染予防を口実に仕事がラクになるのであればウィズ・コロナを長く続けたい。そのような社員はリストラの対象になるでしょう。
 
リモートワークが普及するということは、極限まで効率化を進め、数値をガラス張りにして社員をシビアに評価する宣告に他なりません。その先に何があるか、真剣に考える時期が来ているような気がします。