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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第37回
2020.04.03

人材紹介料率と雇用流動性

求職者にとってはあまり関心のないことかもしれませんが、会社で採用活動に従事している人にとって「人材紹介業者に依頼するとどのくらいのフィーがかかるのか」は大いに気になることだと思います。日本は人材紹介料率が世界で最も高い国だといわれています。これは雇用流動性と密接な関係があると考えられます。昨今、採用市場では空前の売り手市場が続いており、一般的にはホワイトカラーの紹介料率は年収の30~35%平均で推移しています。ホワイトカラーといっても看護師、配膳人、モデル、マネキンなども含まれるので一概に言い切れるものではありませんが、人材紹介料率は雇用流動性と対比させながら観察していきたいものです。
 
みなさんご存知のように、日本の会社の99.9%は中小企業で、大半の勤労者が中小企業に勤めています。ある統計によれば20歳から60歳までを対象とした日本人の平均的な転職回数は4.5回とのことです。一方アメリカでは平均12.6回になるそうです。アメリカ、中国、東南アジアなどを見ると、雇用流動性が高いせいで人材紹介料率が10%台まで下がっている国も珍しくありません。もちろん人材紹介料率が流動性を決めているのではなく、流動性を以て料率が定まっていると考えるのが自然です。つまり転職が自然なことになり、人が動けば動くほど、人材紹介料率は低コスト化してくるわけです。
 
ところが日本では、転職回数が5~6回を超えてくると、逆に評価されにくくなるというのが現状です。以前から「日本も雇用流動性を高めなくてはならない」と各方面で叫ばれていますが、お国柄や文化の違いもあり、なかなか流動性は高まりません。それを一概に良い悪いと決めつけるわけにはいきませんが、諸外国との違いを痛感するところです。
 
エージェントの私が申し上げるのも妙な話ですが、人材紹介料率が年収の30%以上というのは非常に高い数字です。採用コストが全般的に上昇している現状を考えると首を傾げる部分があります。とはいいながら、私ども東京エグゼクティブ・サーチの人材紹介料率は更に高く、45%前後となっています。しかしこれには正当な理由があります。それは難易度の高さ、重要な役職、機密性の確保、こうしたポジションに限定して扱っているためです。またサーチという探索もしているので1件当たりの時間も要するし、1年間に出来ることも限りがあります。他の人材紹介業者とは明確に差別化しているため、高額なフィーがいただけるのです。
 
では、一般的に1人当たりの採用コストはいくらぐらいが望ましいのでしょうか。私は1人当たり50万円前後で抑えるべきだと考えています。採用コストは、公募、紹介会社、派遣などを統合してのものです。どの方法でも「優れた人材が採れればよい」ので、多様な採用手法を取捨選択して、必要な投資をしなくてはなりません。しかし人材紹介会社に依存しすぎるのもよくないので、よく検討することが必要です。一方で異常に採用コストの上昇を嫌って「安かろう悪かろう」の雑な採用を恒常化すると、会社の成長を妨げる要因になるので、それは是正しなくてはなりません。
 
人材紹介会社を経由して入社した人は3年後に5割が退社しているといわれています。彼らがプロジェクトなどで劇的な成果をもたらして円満に辞めているかというと、そうでもないようです。会社の側では「もともと定着率が悪くて人が来てくれないから人材紹介会社に頼っている」という場合もあります。これでは当然、採用した社員も長続きしません。
 
日本の雇用流動性が高くないことを勘案し、採用コストが高めになるという前提で、採用難易度をS/A/B/C/Dと5段階に分けたとしましょう。ここでSとAは人材紹介会社を活用し、B、C、Dは他の方法を使う。そのような取捨選択をおすすめします。その組み合わせで50万円前後、高くても70万円前後で1人当たりの採用コストを抑えられればよいのではないでしょうか。あなたの会社ではそれくらいの金額で採用コストをコントロールできているでしょうか。一度じっくりチェックしてみてはいかがでしょうか。