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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第38回
2020.06.30

クラスエリートとビジネスエリート

エリートというと一般的に「優秀で指導的な役割を持つ人物」を意味しますが、私は大きく2種類に分けられると考えています。それが「クラスエリート」と「ビジネスエリート」というものです。この考え方は私がエグゼクティブ・サーチの世界に飛び込んだとき、最初に薫陶を受けたボスから教わったものです。これはボスの造語で、独特の考え方にもとづく言葉でした。
 
エリートには、高学歴とか一流企業に勤めているとか“毛並みのよい人物”のイメージがあります。私ども東京エグゼクティブ・サーチの人材紹介活動も高い料率で人を紹介するわけですから、企業規模にかかわらず、毛並みのよい人、筋のよい人を求められるケースが多くなります。そこでよく観察してみると、確かにエリートには「クラスエリート」と「ビジネスエリート」が存在しています。
 
まず「クラスエリート」ですが、これは有名大学を卒業し、一流企業または官公庁に就職し、長く勤めて着実に出世していく方々です。転職に際しても履歴書や職務経歴書を見ればひと目で成功が期待できるタイプです。ただし人間性がすばらしいとか、違う環境で実績を上げられるかはわかりません。こうした可視化できる部分の期待感が強い方々を、私はあえて「クラスエリート」と呼んでいます。
 
一方の「ビジネスエリート」ですが、これはビジネスの現場でたぐいまれな実績を上げている人物のことを指します。クラスエリートのように可視化できない部分はあっても、ビジネスの現場に登場すれば非常に高い成果が期待できる方々です。ただしクラスエリートの要素が入っていないビジネスエリートの場合、よく知られていない会社で、そのホットなテーマ、会社の命運を賭けたプロジェクト、あるいは炎上してしまった事業の再生など、いろいろなテーマに獅子奮闘しているため、業務経歴書の職種が散らばってしまい、何に専門性があるのか見えにくいケースがあります。またかなり短い期間で多くの会社を渡り歩くこともあり、業務経歴書の転職回数が多くなることもあります。すなわち経歴書上は美しく見えない人物もいるということです。
 
私ども東京エグゼクティブ・サーチは、経営者や採用担当者から、実力を発揮して実績を上げてくれるビジネスエリートを求められることがあります。ところが後日、該当する人材を推挙すると、残念なことに90%の会社が断ってきます。そこで出てくるのは表面的な理由で、転職が多い、専門分野が見えないといったものです。私どもは「経歴書では実力が見えない」というビジネスエリートの特徴をご説明していますが、なかなかご理解をいただけないようです。
 
このようにビジネスエリートの能力を持ちながら適切な環境を与えられず、くすぶっている人材は相当数、存在するのではないでしょうか。もちろん経歴書が美しくなく転職回数が多いことで、価値がないと断じられているのです。選考でクラスエリートの表面的な評価を当てはめてしまい、ビジネスエリートに相当する人材を弾いていないか、確認してみるとよいでしょう。その場合、業務経歴書からは見えない能力について代弁できるエージェントが不可欠です。公募などエージェントの入っていない表面的なところでは、雇う側と雇われる側、お互い損をしていることがあるかもしれません。
 
会社には「2・6・2の法則」というものがありますが、業績はさておいて、どのような組織にもエースがいます。このエースは、違うところに行ってもエースか?という点を見なくてはなりません。「こちらの組織では光るが、あちらの組織では光らない」という人物も多いのです。その点、ビジネスエリートは「どこに行ってもデキる人」です。使う側の腕が試されますし、経歴書の上でネガティブに見られがちですが、採用側はその人物の理念、高い能力、豊富な実績、崇高な人間性などを見抜くべきです。表面的な学歴や見栄えを追いかけて、ビジネスエリートに相当する人材を逃がしていないか、改めて検証してみる必要があるのではないでしょうか。