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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第36回
2020.02.28

エグゼクティブ採用失敗の代表的な例

これまでも取り上げたことのあるテーマだと思いますが、雇う側と雇われる側の論理には微妙な違いがあります。そして、それが失敗につながることがあります。今回はエグゼクティブの採用にあたって起きがちな失敗の代表的な例をご紹介したいと思います。
 
東京エグゼクティブ・サーチは、CEO(最高経営責任者)、COO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)など、企業のトップクラスの採用支援をさせていただくことがあります。これらの採用では会社が求める人物像や、候補者が持っている能力について、かなり明確になっていることが多く、それに該当する人材層はクリアになっています。ある意味、サーチ会社にとっては人材を探しやすい案件といえるかもしれません。しかし、こうしたエグゼクティブの採用については意外な落とし穴があり、それが原因で失敗を招いてしまうことがあるのです。
 
ここに業績を伸ばして急成長している会社があるとしましょう。強力なリーダーシップを持つ社長が、これまで苦楽をともにしてきた仲間と一緒に会社運営に当たり、会社が一定の段階まで成長してきました。これからは社員も増やさねばなりませんし、会社が位置するゾーンも変わることが予想されるため、更にもう一段会社を成長させなければなりません。そうなると現在の経営陣よりもレベルの高い人材が必要になってきます。結論として外部から優秀な人材を採用しなければなりません。
 
ワンマンタイプのトップが「自分がCEOになり、ナンバー2を採用してCOOに据える」と鼻息荒く宣言することが多いのですが、これが実は頓挫しやすいのです。実際はこれまで一緒に苦労してきた現役員をおろそかにするような形になり、社内でのコンセンサスも取りにくくなるということになりがちです。そこで社内でソフトランディングを図ることになります。それは新しい人材を現在の役員の下に配属し、実績を上げてから役員に登用するという方法です。しかし、この苦肉の策が失敗の原因となります。
 
雇う側は採用する人材が「役員としての実力を発揮してくれること」を求めています。しかし現役員の下に配属することで、思うように成果が上がらないという結果になりがちです。雇われる側としても役職や報酬が低くなり、権限も限られ、オファーが魅力的ではなくなってしまいます。すなわち雇う側は「安い年収で必死に働いて奇跡的な実績を出すようがんばってください。結果が出たら昇進も昇給もすぐに実施します」というスタンスになります。そうなると雇われる側は、その会社によほど将来性があるか、大きな魅力を見いだせないと、リスクを負ってチャレンジしてくれません。
 
このエグゼクティブの採用という課題において、解決方法はふたつしかありません。ひとつはトップみずからが社内の交通整理をして新しい役員を迎え入れ、全社一丸となるようリーダーシップを発揮すること。もうひとつは現役員の下に新しいエグゼクティブを配属するというソフトランディングです。言うまでもなく後者はどうしても候補者の質が落ちることになります。多くのトップは採用されてすぐCOOになる人と、一旦役員の下に配属されてCOOをめざす人を同等に見てしまいます。しかし雇う側は候補者のレベルが違ってくることを認識すべきです。この違いは重要なポイントです。
 
新しい人材をソフトランディングで現役員の下に配属する場合、もともとビジネスマンとしてのレベルが違うと同時に、役職、報酬、権限などに起因するモチベーション低下が起きやすく、エグゼクティブの採用失敗につながることが多くなります。もちろん私たち東京エグゼクティブ・サーチは人事面で不穏な動きがあれば、立場上すぐ気づくことができますし、必要に応じて適切なアドバイスをすることができます。しかし理想に燃えるトップが社内の保守的勢力の影響を受けて次第にソフトランディングに傾いていくことがあるのは残念なことです。
 
このように現役員よりも優秀な人材に活躍してもらおうと企図しながら、実際は活躍の機会を奪ってしまうケースが見受けられます。その結果、優秀な人材は会社を去ってしまいます。以上のような事例がエグゼクティブの採用における代表的な失敗例です。優秀なエグゼクティブを採用する際はトップが社内をしっかりコントロールし、新しい人材が思う存分腕を振るえるような環境を用意するべきです。