転職希望者 採用応募 企業担当者様 お問合わせ
  • 転職希望者採用応募
  • 企業担当者様お問い合わせ

社 長 コ ラ ムCOLUMN

第34回
2020.02.06

オーバートークとアンダートークを避け、 等身大の自分をプレゼンテーションする

転職の面接では、オーバートークでもなく、アンダートークでもなく、等身大のプレゼンテーションを心がけなければなりません。
 
若い人はそうでもないのですが、ミドル以上の方や、仕事の成果を順調に積み重ねてこられた方は、キャリアの中盤以降での大きなチャンス、すなわち管理職のポストとか、経営に近いポジションとか、そのチャンスが出てくることもあると思います。そうしたチャンスというのは 優秀な方には次々舞い込むことがあるかもしれませんが、普通はここが面白そうだとか、ぜひここで働きたいとか、本人の希望とピタリと合致するケースは決して多くありません。人との出会いと同じです。そういうチャンスをつかめそうになったとき、やはり人間というのは気負いやすいもので、必要以上に自分を大きく見せようとしてしまう方がいらっしゃいます。先日のコラムにおいて、経歴詐称のお話をしましたが、きょうお話ししている「自分を大きく見せる」というのは、ご自身の上げてきた仕事の実績、そこで風呂敷を広げるというか、尾ひれをつけて話してしまうことが多いのです。
 
面談の席で「私はまったく仕事ができない人間で」と話す方はさすがにいらっしゃらないと思いますが、たとえば営業マンの具体例で申し上げると、実際に上げた実績より数字が過大になっていることがあります。これを確かめる術は現実的にはありません。業界を熟知しているライバル企業等であれば、実際の数値等を見て過大かどうかわかると思いますが、業種、業態の規模が変われば、どれほど難易度が高く、実績が高いかというのを正確に推し量るのも非常に難しいと思います。ですから実績を数値で語られても確かめることができません。その結果、オーバートークが日常化してしまうことがあります。
 
また、新規事業の立ち上げ、新しいプロジェクト、そうした場面での経歴についても風呂敷を広げる方が多いように思います。たとえば新規事業の立ち上げを考えたとき、私などは10回トライして1回でも実になることをしていたら、かなり優秀だと評価しますが、ときおり新規事業立ち上げの専門家のような経歴を引っ提げて、かなりの高い確率で事業を成功させたということを書かれている方がいらっしゃいます。しかし実際に裏を取ってみるとたいした実績ではないことが多いのです。むしろ新規事業を次々と成功させている方は、もうご自身で起業されているケースが多いと思います。先に述べたとおり、私は10回新規事業に挑戦して1つでも成果を残していれば、それはもう立派な経歴だと考えています。そこからかなり逸脱したおいしい数字が記載されていると、何か疑問を感じざるを得ません。もちろん100%が偽りとは申しませんが、かなりの確率で粉飾がなされている可能性があると思います。
 
採用担当のみなさんに「こう言ってください」というわけではないのですが、私は求職者の方に必ず次のような質問をするようにしています。
「□□さん、この新規事業で挙げられた実績はたいへん素晴らしく、目を見張るものがありますが、この新規プロジェクトを成功裏に導かれた一番の要因、成功した原因、理由はどこにあったとお考えですか?」
模範解答のようになりますが、あまたの方を見てきて、本当に優秀な方の回答の傾向はおおむね次のようなものです。
「福留さん、私自身は、本当はたいしたことなかったのです。このプロジェクトは社運を賭けたものであり、会社が失敗できないという覚悟のもとに、たいへん有能なメンバーをアサインしてくれたので、そうした皆の献身的な努力があっての実績であって、私だけの実績ではないのです」
 
これは、アンダートークのひとつかと思いますが、読者のみなさんはいかがお考えになるでしょうか。特段、不愉快な思いはなさらないのではないでしょうか。本当に仕事ができる方は、まわりへの配慮、気配りというものを合わせ持っている方が多いので、このようなお答えをされる人が信頼できると考えています。その一方で「全部私がやりました」、「私の尽力でこのプロジェクトは成功しました」というような、オーバートークとは言わないまでも、そういう自負を常にお話になる方に、あまり超一流の方を見てこなかったというのも、振り返って思うところです。