転職希望者 採用応募 企業担当者様 お問合わせ
  • 転職希望者採用応募
  • 企業担当者様お問い合わせ

社 長 コ ラ ムCOLUMN

第35回
2020.02.14

オーバートークでは誤魔化せず、アンダートークでは評価されない

経営者の実績を振り返るときは、失敗した仕事の原因だけを見るのではなく、なぜ成功できたのか、を重視します。成功の要因がわかっていない場合は安定して成功させることができません。ですから結果だけをみるのではなくて、なぜ成功したのか、なぜ失敗したのか、そこから何を学んだのか、という経過を観察することが大事です。ひとつひとつの要素を地道に積み重ねて、誰も見ていないようなものを見ていくこと。世の中の経営者の方々も大きな失敗のなかにひとつかふたつの成功があって、それが会社を支える仕事になっていくことが多いので、候補者の方がそうした経営者よりも成功を語れるはずがありません。そういう観点から、みなさんがオーバートークをして誤魔化せるものでもないし、アンダートークをして自虐的または謙虚になりすぎても、それが良い評価を得るわけでもありません。
 
ところで経験の浅い人材コンサルタントがオーバートークを見抜き、またアンダートークに適切に対応するのはなかなか難しいことです。しかし、該当する業界に詳しいコンサルタントであれば、それがわかることが多いので、話すことが業界事情とずれているような場合や、これまで会った優秀な方々と属性の違う発言をするようなことがあると、何となく違うという感触を得ることができます。こうしたところから違和感を持って、異変に気づくということがあります。基本的に嘘や虚飾は露見するものなのです。
 
自分を実際以上に大きく見せようというオーバートークに比べ、謙虚さを感じさせるアンダートークは悪いことではないように思われるかもしれません。しかし、自分の評価をあえて下げる面もあるので、そこは注意すべきでしょう。仮に「生活できる程度の報酬があれば満足です」と言った場合、仕事に自信がないと受け取られる場合もあります。こうしたアンダートークも避けるべきでしょう。
 
では、採用候補者はどう自分をプレゼンテーションすればよいのでしょうか。やはり等身大で向き合っていくことが必要です。特に最終段階で面接する頃は、一流の経営者やエグゼクティブと接触することが多いと思います。そういう方ほど人を見抜く眼を持っていらっしゃるので、やはり等身大で向きあっていくことが望ましいと考えます。
 
採用後に露見するかどうかは別にして、もしオーバートークが成功して採用されてしまうと、そのプロジェクトに見合ったことができるという期待感をもとに採用されているわけですから、できもしない仕事を与えられて、あとで大変なことになったりすることもあるわけです。そういう最悪の事態もありうるのですから、オーバートークには十分注意をして、等身大の自分をアピールしなくてはなりません。学力、語学力、技術力などについても、ここまではできる、これ以上はできない、と明確に伝えることが大切です。
 
私たち東京エグゼクティブ・サーチが扱った事例でも、「英語が得意です」という候補者の言葉を企業側がよく確かめずに鵜呑みにしてしまい、その人物が入社2か月後に北欧の工場に赴任したケースがありました。実はそれほど高い英語力は持っていなかったのですが、面接の際に英語が堪能だと言っていたので、期待を一身に背負って派遣されたものの、実はほとんど英語が話せなかったのです。それで3か月で解雇されるという顛末になりました。極端な例ではありますが、このように上級管理職、エグゼクティブのポジションに近づくほどオーバートークはあとで大きな問題になります。
 
私は候補者の英語力を確認するために、面談する際は最初に30分ほど日本語で雑談をしたあと、何の前ぶれもなく「この後は英語で話をさせていただきます」と言って、英会話に変えさせていただくことがあります。そこでしどろもどろになる方は、実際は英語力がないわけです。私たちはこうした方法で実像に迫るようにしています。まともに話せない英語を話せるとオーバートークしてまで、何としても自分の望むポジションをつかみ取りたいという気持ちも理解できますが、できること、できないこと、できないけれどチャレンジしたいこと、ここは明確に分けて会社に伝えることを心がけるべきでしょう。