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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第32回
2019.12.13

レファレンスチェックを経験したことがありますか?

みなさんはレファレンスチェックというものを経験したことがあるでしょうか。これは外資系企業で多く見られる調査手法で、実際問題として日本の企業ではあまり行われていません。わが国のビジネスシーンでなじみが薄いため「そんなものは聞いたことがない」という経営者も多いことと思います。レファレンスチェックとは、採用活動において、企業が採用候補者の以前の雇用主などに問い合わせ、候補者の仕事ぶりや人となりについて確認をする人物調査のことです。
 
レファレンスという言葉を辞書で引いてみると、図書館で資料を求める際に、職員が情報を検索したり資料を提供したりするサービスと記載されています。もうすこしわかりやすく言うと、レファレンスというのは「調べ物」「探し物」のお手伝いをしますということです。これが語源と思われますが、私たち人材業界でレファレンスというのは「候補者を紹介し、内定の一歩手前、選考の最終段階に差し掛かった時に、その人物の評価を第三者(人材エージェントや求職企業を除いた中立的な立場の観点)が客観的評価をする」ことをいいます。つまり候補者の更に詳細な評価をするためにお手伝いしていただくということになります。ただし機密を守ることや個人情報の保護という観点が昨今はたいへん厳しくなってきたので、以前に比べると省略されるケースとか、効用に関してクエスチョンが付くケースも増えてきました。しかし外資系企業では現在も活発に行われています。
 
レファレンスチェックの具体的な手順としては、私たち人材エージェントが採用候補者の以前の雇用主や同僚に問い合わせ、候補者の仕事ぶりや人となりについて、確認を行う人物調査を行います。通常は「レファレンスを取る」、「レファレンスチェックを行う」と表現されます。ここまでお読みになられて疑問を感じた方も多いと思いますが、そんなことをしてしまったら、内定の前にその人が転職活動しているということが明らかになってしまうではないか、と思うのではないでしょうか。そう思われるのはごもっともで、言い換えますと、レファレンスチェックは、ひとつまえ以上の勤務先の在籍時に対して行われるものなのです。すなわち転職回数がない場合レファレンスチェックは行えないということになります。この段階で、この手法が完璧とはいえないことが理解できると思います。
 
レファレンスが日本でなじみがないのは、転職文化がなかったせいだと思われます。以前、このコラムで取り上げたことがあるかもしれませんが、欧米は雇用流動性が高く、生涯の転職回数も日本に比べると3倍以上になっていることも珍しくありません。ですから海外ではこのレファレンスチェックの効用があるわけですが、日本の企業の場合は転職率が少なく、いちども転職せずに定年を迎える方もいらっしゃるわけで、その辺の文化の違いが現れているといえるでしょう。
 
また、レファレンスチェックで非常にデリケートな質問をしたとしても、日本人の温厚な人柄から確実に正しい情報をお話しになるとは限りませんし、それを確かめる術というものもなく、そのインタビューに協力していただいた方の主観に頼ることになりますから、やはり補完的な役割を抜け出すことはできないという事実があると思います。
ただし外資系企業においては、先に述べた通りに珍しくない行程ですので、仕事ぶりや振る舞いに、その同僚が気になる点があると、言葉を選びつつもネガティブな情報をヒヤリングされる可能性がありますので、レファレンスのためということではありませんが、普段から職場で良いコミュニケーションを確保しておくことが大事だと思われます。特に最近はグローバルの時代ですから、長くお勤めになっていても、ある日突然外資系企業に転職をする方ということも珍しくなくなっています。「自分は外資系企業で働くことなどない」と思っていても、突然キャリアの事情で外資系企業に応募したり転籍したり、もしくは勤務先が買収されてしまうこともあり、その際に突然レファレンスが行われることもありますので、この時代においては「自分には無関係」と思わずに、頭の片隅に入れておくということも大事ではないでしょうか。