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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第76回
2022.10.07

創業社長とサラリーマン社長(後編)

前編では主に創業社長の特徴をご紹介しました。後編ではサラリーマン社長にスポットを当ててみましょう。言葉の聞こえはよくないのですが、いわゆる「雇われ社長」のことです。一般的にイメージしやすいのは、伝統的な企業で6~10年くらいの任期で社長が交代し、バトンリレーが引き継がれていくというパターンです。そして社長に就任する人物のキャリアを振り返ると、組織のなかで人並み以上の業績を上げてきているはずです。


企業規模が大きくなるほど若返りの傾向が強くなるとはいえ、やはり数十年単位のキャリア蓄積の後、社長に就任するケースが圧倒的です。その社長たちは優れたバランス感覚を持っていて、組織の事業を熟知しています。また人間的魅力にあふれ、組織が必要とする調整力を有し、場合によっては権謀術数や権力闘争も身につけるなど、組織で揉まれて台頭してきます。そうなると、やはり他に代えがたいスキルやビジョンを持っている人が多いのです。


そこで私が付け加えたいのは「自己犠牲の精神」です。例えば社長の任期が10年として、その長いようで短い期間中に先代・先々代が種をまいた新規事業が実を結んでいれば、それをありがたく刈り取る作業に恵まれます。そこに集中すれば多くの利潤を上げるなど、在任期間中の見栄えを良くすることもできます。しかし任期中に刈り取りだけして種まきをしなければ、次の世代にツケがまわるのは明白です。ですから先代・先々代が育ててくれた新規事業を感謝して頂戴すると同時に20年後、30年後を見据え、自分が種をまくこともすべきです。それが究極のバトンリレーとなります。しかし、そうすると社員やステークホルダーの反対にあったり、辛辣なコメントにさらされたりすることもあります。会社の確かな将来のためにあえて罵詈雑言に身をさらす自己犠牲の精神も必要になるわけです。立派なサラリーマン社長とは実力や見識だけでなく、こうしたビジョン、リーダーシップ、メンタリティーを持っていることが特徴だと思います。


サラリーマン社長の立場は創業社長と違って資本的に強固ではありません。盤石とはいえない経営環境でリーダーシップを発揮するということは、類いまれな魅力と実績を持っていなければ出来ることではありません。ですから創業社長はバランス感覚を持って難局にあたってくれるサラリーマン社長のすごさをわかっています。その一方でサラリーマン社長はゼロから1を生んだ創業社長のパワーをよく理解しています。こうした創業社長とサラリーマン社長の両方の特徴を持ち合わせているケースというのはあまり見たことがありません。相反する経営スタイルの適性は併せ持つのが難しいものなのだと思います。ゼロから1を生むパワフルな創業社長と、1を100にするバランス感覚のサラリーマン社長。その正反対の持ち味はお互いに有益なものに見えるのでしょう。だからこそビジネス界には社長特有のネットワークが存在するのではないでしょうか。


このコラムをお読みのみなさまも、機会があればお勤めの会社の社長をよく観察してみてください。大きく分けると2つのタイプがあることを理解すれば、たとえマイナス面が目についてもリスペクトすべき面も見つかるはずです。社長の経営力を企業規模で評価するのはあまり意味を感じません。創業社長もサラリーマン社長も一国一城の主。どの社長も「ダテではない」ということを明確に申し添えておきたいと思います。


以上