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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第77回
2022.11.07

経理と人事は経営の根幹

今回は結論を先に申し上げます。それは「経理と人事、すなわちお金と人は権力の源泉となるため、取り扱いには充分注意しましょう」ということです。ここでお話しする内容は会社に限らず、人が集まるあらゆる組織に通用することです。事業を円滑に進めるには仕組み化、ルール化、組織化などが必要で、そこではおのずから職位(トップ、ブレーン、マネージャー、スタッフ等)が定められます。役職者には何らかの権限が付与され、その権限がリーダーシップを司ることになります。会社はその指揮のもとで運営されます。


会社組織において、一部例外はあるものの、通常は社長もしくはCEOが最高権力者になります。大企業は組織をスムーズに動かすために権力委譲を図るなど工夫をしています。本来であれば社長がすべてを決められますが、多くの会社が権力の集中を防いでいます。権限を委譲された者に迂闊に口を出すと組織が混乱するので、個々の案件についてはよほどのことがないと社長でも介入することはできません。これは会社運営における不文律のひとつで、これによって権力は分散されるのです。


私は権限が委譲されるべきものはお金(経理)と人(人事)の2つに集約できると思っています。これを押さえるかどうかで、権限も非常に違いが出てきます。例えば、地位がトップだとしても、末端スタッフの採用が部長決済であるとか、年度予算の執行が規定の枠を越えなければチームリーダーに任されているとか、実際にはお金と人の運用で権限が委譲されています。それによって組織は円滑に動きます。要は組織運営の上で戦略を立てたり方針を決めたりしても、それを実際に遂行していくには執行と人員の予算が必要になります。これがないと何も進みません。従って「お金を自由に使えること」と「人の採用、配置、移動が任されていること」、この2つが権力基盤になります。読者のみなさまが志を立てて何らかのプロジェクトで絶対に結果を出したければ、この2つをご自身でコントロールできなければいけません。さもないとプロジェクトの推進力が弱くなってしまいます。何かを任されたら、この2つを付与してもらうことが肝要です。


その一方で、経理と人事の2つを押さえるということは、社内で余計な妬みや恨みを買いやすいということがあります。また誤解を受けやすい立場でもあります。会社業務やプロジェクトの遂行のために良かれと思って行使した権力も、反対の立場から見れば「排除された」と考える人も出てきます。そうなると権力闘争になってしまいます。権力を行使することで、そうしたリスクを抱えることも知っておくべきでしょう。


戦略、戦術、方針を立案する情報管理部門や経営企画室など、会社には7~8ほどの権力を行使する部署があると思いますが、そのなかでもお金と人はメインフレームです。エグゼクティブを志す人は経理と人事を勉強しておかなければなりません。数字の読めない人、人事のイロハがわからない人がトップになるとバランスを欠いたことをしがちです。権限を持ったときにリーダーシップを発揮し、お金や人を適切にコントロールできるようになっていたいものです。そしてトップをめざすならいずれルーティンワークは人に任せ、経理から財務へ、人事管理から人事企画へと見識を深めていくことです。


あたりまえのことを言っているようですが、いま一度申し上げます。お金と人の2つを存分に行使できなければ志を果たすことはできません。しかしスキャンダルや失脚の原因もこの2つから出ることが多いので自分を律しなければなりません。何ごとも職権乱用しないこと。そして次世代にバトンを渡そうと考えているなら、次の人が権限を適切に行使できる人物かどうかの見極めが重要です。理想的なバトンリレーで後顧に憂いのない経営者をめざしていただきたいと思います。


以上