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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第75回
2022.09.29

創業社長とサラリーマン社長(前編)

私どものエグゼクティブ・サーチというビジネスでは、社長という肩書の方によくお目にかかります。社長の役職は業種業態によって特徴を見極めることができますが、それとは別に大きく2つのタイプに分けることができます。それは「創業社長」と「サラリーマン社長」という分類です。一般の方は「社長は社長」ということであまり深く考えませんが、実は創業社長とサラリーマン社長ではかなり特徴が違うので、その辺をご紹介したいと思います。ただし初めに申し上げておきますが、これは良し悪しの話ではありません。あくまで創業社長とサラリーマン社長のスタイルの違いの観察であって、どちらが良いか悪いかという問題ではないのであしからず。


当然のことですが、創業社長はその会社にとって1回あるいは1人しか現れません。会社の規模はともかくとして、ゼロから事業を立ち上げ、手塩にかけて育て、継続してきた人物です。世間では「創業社長」と「オーナー社長」を同じように考えていますが、厳密にいうと別ものです。株式や経営権を取得したら、創業社長でなくてもオーナー社長になりますから、やはり創業社長というのは唯一無二の存在です。


古今東西、創業社長の大きな特徴は、次の2点にあると私は考えます。
・強力なリーダーシップを持つ人物
・ビジョナリーな人物
これが創業と成長に欠かせない特徴です。ビジネスにおいて、ゼロから1を生むことは非常に難しく、並々ならぬ情熱と実力を要します。創業社長は不可能を可能にする、余人を以って代え難い存在といえます。


私のこれまでの経験では、創業社長は「ぶれない」、「惑わされない」、「影響されない」という資質を持った方が多いと感じています。自分が信じたもの、成し遂げたいものをやろうという意志があり、猪突猛進、一心不乱に取り組んでいくエネルギーを持っています。こうした創業者、起業家の魅力を醸し出せる人物はなかなかいません。そうした特徴があるからこそ、ビジネスモデルがツボにはまり、会社が飛躍的に成長するということになります。一方で、何を以って創業社長を評価するかということはさておき、バランス感覚には乏しい人物が多いと思います。目的に純粋であるということは、ともすると手段を選ばなかったり、人の扱いが不器用になったりします。純粋すぎると原理主義になりますから、行き過ぎた点が出てくるおそれがあります。表面上でお茶を濁すようなことがなく、目的達成に対して純度が高くなりがちです。すなわち創業社長は「濃い」人種といえるのではないでしょうか。詳細は後編に譲りますが、創業社長は「創業社長だけがわかるサラリーマン社長のすごさ」を知っています。そしてサラリーマン社長はまったく逆に「サラリーマン社長だけがわかる創業社長のすごさ」を知っているのです。


創業社長がパワフルに牽引してきた会社は、一定期間、一定規模までは強いリーダーシップで成長できますが、ビジネスにそのカリスマが届かなくなる時点があります。あるラインを超える、その日が必ず来ます。そこでは創業社長のキャパシティが影響します。会社の仕組みや権力構造などを次のフェーズに変えていくのは、言うまでもなく創業社長本人です。これに対応できるかどうかで、会社の将来は大きく変わってきます。


爆発的成長を遂げる期間と、成長のフェーズが変わる時点を読み取り、創業社長のキャパシティを越えた段階で「時代が先に進んだ」と捉え、早急に方向転換しなくてはなりません。この変化の段階で会社組織や社内バランスにひずみが生まれる場合があります。歴史上の権力者は物語を我田引水で修正しがちですが、会社の歴史においてもドラマが展開する可能性があります。そこが創業社長の正念場になります。


(後編に続く)