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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第73回
2022.08.19

社外取締役のサーチ事情

以前、別のテーマでコーポレート・ガバナンスと、それに基づく社外取締役の重要性について触れたことがあると記憶しています。4月になって新しい期を迎えた組織も多いと思いますが、トップ人事も活発に行われる時期です。正確に言えば企業のトップ人事は株主総会の事案ですから、集中開催になる6月頃に決まるものです。とはいえ実質的には4月が新体制のスタートになると考えてよいでしょう。


この時期になると、トップが替わった企業から、自社の幹部を入れ替える相談が寄せられます。もちろんこれは新しいトップのリーダーシップによるアクションで、トップ自らが乗り出してくることもあります。そのなかで社外取締役について相談を受けることも多くなってきています。社外取締役の設置義務や役割についてはルール化されていますが、日本はまだまだ後進的な状況だと言わざるを得ません。社外取締役はごく一部の著名な人物、特に話題性のある女性の候補者に人選が集中する傾向が顕著です。


弊社がお手伝いしている企業の社外取締役の探し方について述べてみようと思います。教科書的な一般論ではなく、リアルでストレートな例があります。社外取締役のサーチに到って、私どもはこのように企業のトップにお尋ねします。「本当に御社にとって有益な知見やアドバイスを差し出してくれる人を望みますか? それとも正直なところ余計なことを言わずにいてくれる人が望ましいですか?」その質問に対して、建前は前者、本音は後者というトップが約7割です。ここから見てもやはりアクティビストボード(もの言う役員)がいかに歓迎されていないかが垣間見えます。社外取締役の本来の趣旨は、これとまったく反対のことを求めるために行われている制度ですが、実際にはこれが現実なのです。


社外取締役が就任する企業で、高いレベルの業界や製品に関する知識を持つことは容易ではなく、その企業を知り尽くすことも難しく、何かとハードルが高いものです。従って社外取締役はその人物が有しているこれまでの経験に基づく提案やアドバイスをするのが現実的です。この道数十年というベテランのなかで、経営陣から見て同等とはいえない役員の中途半端な意見で取締役会が混乱するのを歓迎したくないのです。社外取締役は常勤ではなく、名誉職のような位置づけです。データを見ると東証一部上場企業の社外取締役の平均年収は880万円。複数兼務される方もいらっしゃるので、これが高いか安いかは人によって受け止め方が違います。そういう立場の人が波風を立て、企業の名誉を毀損するリスクを犯して「ものを言う」かというと、そうではありません。このあたりの不可思議な経営陣と社外取締役になりたい人のニーズが一致することで、本来の理念とかけ離れたところで人選が行われていることが現実だと思います。すなわち経営者と親しい知人、友人、血縁で人事が決着しているのが実情です。私どもが見たところ縁故関係が70%と推察します。透明性の高い経営に有益な知見やアドバイスを与え、取締役会を充実したものにしようというケースはまだまだ少数と言わざるを得ません。


このような事情から、社外取締役のサーチについての相談件数はあまり伸びていません。逆にそのような実態があるにもかかわらず、ご相談いただけた場合は、逆に社外取締役および取締役会をコーポレート・ガバナンスに基づいた良いものにしようという広い視野で人選を行っている証でもあり、そういう高い志を持っているからこそフィーを払っているのでしょう。こういうまともな企業だけにサーチを行って行けばよいというのが弊社のスタンスです。少数のご相談であっても、誠意を持って尽力していく所存です。


以上