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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第72回
2022.07.29

アンソリという存在

社名にあるように私たちはあくまでもエグゼクティブ・サーチを主たる業務とするファームです。ところが、会社を辞めたい、転職候補として登録したいというようなコンタクトをしてこられる求職者もいらっしゃいます。確かに私どものウェブサイトでは、そうしたご希望を受け付ける窓口を設けています。しかし原則として弊社はその種の登録はお請けしておりません。というのもエグゼクティブ・サーチは企業による求人のスペックに基づき、それに相応しい人物を探しに行くビジネスだからです。転職登録している方に職を斡旋するのとは明らかに違います。出口は似ているかもしれませんが、途中の動線が180度異なり、全く別のビジネスモデルといえます。


人材業界でよく使われる業界用語に“アンソリ”というものがあります。これはアンソリシティUn solicityという英語を日本流に略したもので、私どものような人材コンサルタントが探しに行くことなく、求職者の側からレジュメを送ってきて求職活動することを指します。私ども東京エグゼクティブ・サーチは求められるスペックをもとに人材をサーチする会社なので、逆の流れで届いたレジュメについてはマッチングしないのが通常です。頭をひねって履歴書や職務経歴書を書いて転職しようとしている人よりは、忙しく働いて成果を挙げている人のほうがマーケットバリューを持っていると考えます。


ちなみに“アンソリ”のソリシティには、声を掛ける、誘う、懇請するという意味があり、アメリカ英語では孤独というニュアンスのスラングになっています。人材業界ではアンをつけて、強い一匹狼ではなく、弱さをカバーするために群れている人々のことを指す言葉として使われます。これは“アンソリ”の人物を低く評価しているわけではなく、エグゼクティブ・サーチとはそもそもビジネスモデルが違うということですので、誤解なきようご理解ください。


確率論でいえば、本当に仕事ができる方というのは高い確率でウワサになるので、リクルーターのほうからコンタクトが殺到するようになります。実績があると求職活動など何もしなくても、歩いているだけで自然に声が掛かるようになるのです。ですから私どもの人材業界というのは、その優秀な人が飛びついてくれる案件を誰が最初に提示するかという競争を繰り広げているわけです。


先ほどご紹介した“アンソリ”に関する余談ですが、私ども人材コンサルタントは、自分からコンタクトしてくる求職者に興味を持つことは失礼ながらほとんどありません。しかしお会いした以上は何らかの情報を得ようと努力することになります。求職者の方に対して「この仕事に適した人をご存知ありませんか」とさりげなく聞いたりもします。そうすると「この件に私は興味がないけれど、この人にあたってみたらどうですか?」というような情報を手にする可能性があります。それを元にコンタクトすることもあります。そうでもしないとエグゼクティブ・サーチの人材コンサルタントは飛び込みの求職者に会うモチベーションがありません。先ほど述べたようにビジネスモデルが全く違うからです。


読者のみなさまも、もし転職活動にお悩みの状況であれば、このような背景を理解した上で人材紹介会社を選択なさるのも大事なポイントになるかもしれません。本来のエグゼクティブ・サーチとは全く違う“アンソリ”という存在から学ぶこともあるような気がする昨今です。


以上