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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第58回
2021.11.23

副業で自らを再点検する

今回は、前回のコラム「動くのが億劫な“ゆでがえる”になるな」をお読みいただいたという前提で書かせていただきます。私は現在、個人が副業を持つことを積極的におすすめしています。副業にはキャリア形成上のメリットがあるとか、本業以外の余暇で自己を充実させるとか、純粋に金銭的なプラスを得るとか、いろいろな目的があります。副業の価値観は人それぞれですので、あえて論評することはありません。私が副業を推奨するのは、この2年ほど多くの人に接してきて、個人のキャリアに対する志向がずいぶん弱くなってしまったなあ、と思うようになったからです。それゆえご自身のキャリアを真剣に考えていただくきっかけにするため、以前よりも強く副業を推奨している次第です。これは私たち東京エグゼクティブ・サーチでも実際に行っている取り組みです。


私が副業をおすすめするのは、メインのキャリアで培ってきた知識や能力や経験が、レベル感の類似した業界で、どれくらい通用するか試してみていただきたいからです。ビジネスには競業避止義務などもあるので、まったく同業他社とはいかないまでも、似たような業界で挑戦してみることができます。たとえば最近よくテレビなどで紹介されている、某企業の企画担当者が週末を使って自分が生まれ育った自治体でまちおこしの企画を引き受けたというケース。コロナ禍でリモートワークをして、物理的にコミュニケーションの質量が低下しているなか、自分の持っているスキルやキャリアがどのくらい他で通用するか再点検する意味でもこうした腕試しをしていただきたいと思います。企業も個人もコロナ禍が通り過ぎるのをひたすら待つことで精一杯の1年半でしたから、そろそろ意識を転換する必要があります。海外のいくつかの保健機関で「これ以上、新型コロナウイルスの毒性が強くなることはないだろう」という見通しが出ました。まもなくコロナ禍は去る、という前提でこれからは発想するべきでしょう。今年、私たち東京エグゼクティブ・サーチは4名の人材(ハイキャリア)を迎え入れました。その全員に社外取締役、前職の顧問などの兼業を認めています。


コロナ禍が過ぎ去った後、自社のことはある程度わかるにしても、外の世界がどうなっているかわからないかもしれません。ネットの記事を鵜呑みにする人もいますが、それでは信憑性がありません。会社の指示で在宅勤務をしていた人も多いでしょうが、勤めている会社が脆弱だと、変われない個人も多いようです。そういう人にとってアフターコロナは厳しいものになるでしょう。逆に涼しい顔をしてスキルを伸ばしている人がいるかもしれません。在宅勤務を指示しても出社してくる個人が多い会社は強いと感じます。


個人と同じように、コロナ禍のもとで驚くほど体質を強化した企業がある一方で、著しく衰えてしまった企業もあると思います。今後、どうなるかは誰にもわかりません。このような時期に、すぐ転職を考えるのはリスクかもしれません。冷静に考えれば、必ずしもよいオポチュニティとはいえないでしょう。しかし現職で仕事をしながらコロナ前とコロナ後を比較し、現時点での自己評価がどうなったか考えるのは意味があります。自己を客観的に点検するには、メインの仕事の合間にプラスアルファの副業を試みるのもよいでしょう。チャレンジはリハビリになるので、そういう意味でもよい方策かもしれません。コロナ後は、以前のようにパラレルキャリアのトレンドで副業を推奨したのとはすこし違いますが、アフターコロナを見据えて自分のスキルを「再点検」するべく副業を模索してみるのはいかがでしょうか。