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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第46回
2021.03.01

反転攻勢と人材確保のタイミング

新型コロナウイルス感染症の流行による経済の停滞がはじまってから、早くも半年以上が過ぎました。街頭に立つと、このところ人々の往来や消費行動が少しずつ回復してきたように見受けられます。以前、このコラムでも触れたことがありますが、エグゼクティブサーチ(ヘッドハンティング)の現場から世の中を観察していますと、不景気から回復するタイミング、そのターニングポイントにはひとつの傾向があると思っています。


その傾向とは、簡潔に申し上げますと、企業で猛烈なリストラがはじまって世間が大騒ぎになっている時期、その中盤からピークを迎えた頃に、新しい動きが見られるようになるということです。この時期になると、私どもに優良企業から幹部人材採用のご相談が舞い込んでくることが多いのです。これが大きな特徴のひとつです。
もうすこし踏み込んで説明しましょう。未曽有の不景気に直面すると、当然のことながら企業は固定費削減を主目的として、配置転換を含めた人員削減に踏み切ることが多くなります。大掛かりなリストラのはじまりです。本来リストラクチャリングという言葉は、ご承知のように「事業の再構築」を意味します。必ずしも人員整理のことではないのですが「リストラ=解雇」のイメージはどうしてもつきまといます。多くの企業でリストラがはじまるとテレビや新聞でも失業者にスポットを当てた報道があふれるようになり、社会には実際より激しい不景気感が漂うようになってしまいます。
企業というのは、永続性を前提とした存在です。ムダ、ムリ、ムラを省きつつ延命していても、どこかで反転攻勢を狙っています。それは経営者の性(さが)と言ってもよいでしょう。人員整理をしすぎてしまえば、反撃の際に支障があります。人を減らして、新たな人を呼び込むことで、筋肉質の組織をつくることをめざすようになります。


いま持っている経営資源を再配分して新しい可能性を育てようとすると、どうしても人が不足してきます。すると不要と判断した人員を放出したあと、V字回復をめざして組織をリードする経験と実績のある優秀な人材を求めることになります。だからこそ、不景気のどん底と思われるときに、水面下で次の仕掛けがはじまります。私どもは、そのようなタイミングで相談が舞い込んでくるようになったときに「景気が底を打った」と判断します。世間の感じる表面上のタイミングとずれた時期に採用が行われること、それがエグゼクティブサーチの伝統的な特徴なのです。
このような人材市場特有の現象を観察していただくのも面白いのではないでしょうか。こうした景気動向に関する“読み”は、経営や株式投資などにも役立つのではないかと思います。経営者は先見の明を持って、他より先に手を打つこと。それができないと企業の舵取りは任せられません。先手必勝の賢明な経営者と世間一般が感じている微妙なタイミングのずれ、そこに注目することで一歩先を考えるヒントが見えてくるはずです。