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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第47回
2021.04.07

通称「ゾンビ企業」をどう脱皮するか

私はこのところ東京エグゼクティブ・サーチのクライアントをはじめ、多くの企業を訪問して経営陣とお話をしていますが「厳しい状況を肌で感じている」という声が日に日に高まっているように思います。最近の報道でも見かけますように、コロナ禍で特需を得ている一部の企業、もしくは厳しい状況下でも増収増益を果たしている企業がある一方で、これから本格化する上場企業の決算は少なからず厳しいものになりそうです。また未上場の中堅・中小企業では多くの会社が減収減益に見舞われる様子です。特に観光関連と飲食業は後がない状況に追い込まれつつあります。


中堅・中小企業の経営者と膝を突き合わせて話していると、雇用調整助成金、持続化給付金、家賃給付金によって会社が生き延びているという自覚を持っている方が多いことに驚きます。なかには生き延びているというよりは「生き延びさせられている」とネガティブに感じている経営者までいらっしゃいます。
コロナ禍における経済面での救済策については政府の対策不備を批判する声もありますが、経営者のなかには感謝している方が多いと感じます。一般の方はどれほどご存知かわかりませんが、コロナ禍の休業を実施した場合、従業員の休業手当負担額の3分の2(中小企業)または2分の1(中小企業以外)が補給される雇用調整助成金はたいへん手厚い施策です。しかも2020年12月まで延長されることになりました。このような制度は企業にとってありがたい反面、これに頼り切ることへの危惧も論じられています。
コロナ禍のまえから業績が低迷していた企業が、国の緊急融資策により手元資金を厚くすることができ、生き延びることができたという話もあります。すなわち実際は死んでいるのに息を長らえることができた会社。これを通称「ゾンビ企業」と呼ぶのだそうです。

さてこのように国の救済策は一定の成果を上げていますが、雇用調整助成金については、報道等であまり出てこない懸案があります。それは、この助成金の財源が「あと2年で底をつく」という事実です。つまり同じサポートがいつまでも続くわけではないということ。新型コロナウイルス感染症の流行が続こうが続くまいが、雇用調整助成金のような恩恵はあと2年で消えてしまうのです。この点は冷静に見ておかないとなりません。「まだ2年ある」と「もう2年しかない」で考えが分かれるところですが、次に進まなくてはならない、という事実は変わりません。
現在、企業は国の救済策によってようやく立っている面があり、多くの企業の実態は延命させてもらっているという状態なわけです。会社が実力以上に見られていることをサラリーマンは自覚しなければなりません。「救済されてあたりまえ」と思うのではなく、サポートに感謝すること。そして自分の責任で反転攻勢して行かねばならないことを肝に銘じるべきではないでしょうか。救済策はコロナ禍が過ぎ去るまでの時間的猶予を与えてくれるものであり、現状維持のために頼りきってはいけません。自分の会社もゾンビとして生き延びさせられているのだという自覚が必要かもしれません。もし国の救済措置がなかったら、かなり人員削減が進んでいるはずです。いま次を見据えて人材を採用しようとしている会社は、コロナ禍の前には好業績だった会社です。一方でゾンビ企業は新しい人材を雇用する力がありません。
不景気のときに人を採れる会社というのは、いつも虎視眈々と爪を研いでいて、採用攻勢をかけるタイミングではかなりの追い風が吹いています。ゾンビ企業を脱皮するためには優れた人材を採用し、業績を確保していくしかありません。かつてリーマンショックの後、ほとんどの企業が採用低調なのに、ユニクロと楽天が積極的に採用していたことを思い出します。不景気で人が採りやすい、優秀な人がたくさん人材市場に出てくると考えるのは、その時好調な会社に限られます。


最近思うのですが、ウィズコロナが長引き、先行きが不透明なこともあり、経営者や従業員が緊張感を失っている印象があります。落ち込むにせよ、元気を鼓舞するにせよ、どれくらいの期間で事態が収拾するのかわかりません。気がついたらいつの間にか自分の会社が「ゾンビ企業」になっていた、ということがないようにしたいものです。