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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第45回
2020.12.17

悪質と批判される人材紹介の事例

一部の人材紹介会社で倫理的に問題があると指摘される行為が行われているそうです。そのエージェントは医療機関を舞台に暴利をむさぼっていて、かなり悪質だという批判が寄せられています。これについては国会でも取り上げられ、論議を呼んでいます。
 
現在、医療機関における医師、看護師、薬剤師は猛烈な人材不足で、求職活動をすると1人当たり数10件の求人が殺到するといいます。人材紹介会社がこうした状況を見て、鋭意活動しているのも頷けます。看護師はホワイトカラーより生涯で3倍以上転職回数をこなすとされています。普通は転職をすればするほどキャリアに傷がつきますが、恒常的な人不足である看護師市場では転職でキャリアに傷がつくことはなく、いくらでも働き口があるということになります。そうなると看護師は強い立場にあるわけで、人間関係や労働条件に不満があるとすぐに転職してしまう傾向にあります。そして人気職種ゆえに人材紹介手数料も固定され、一律金額になっていることが多いのです。そこで次のようなことが起きてきました。
 
人材紹介会社が看護師に医療機関への転職の斡旋をしたとします。そして斡旋した人にすぐに声を掛けて、条件のよい他の医療機関に転職させてしまうというのです。すなわち手数料を取って紹介した看護師を、自らすぐに引き抜いてしまうということです。これに一部の医療機関が立腹しているという話でした。その話を聞いて、私たちも人材紹介事業者として許されるべきものではない!と感じました。
 
とはいっても日本には「職業選択の自由」があるので、何らかの要因を挙げて職場を替わりたいと申し出てきた場合は拒否できないことになっています。業界ではこれを「全件受託の原則」といい、すなわち求職者を差別したり選り好みしたりしてはいけないと法律で定められているのです。そのような状況下で一度斡旋した人にまた声掛けするという行為は、各エージェントの倫理的な部分に委ねられていますが、こうした事態は人材流動性が極めて高い業界の一部で多く見られるようになり、問題とされています。
 
ご存知のように医師の年収は高いという事実があります。医療機関における紹介手数料の料率は低いことが多いのですが、それでも一般の3倍をはるかに超える料率です。したがって医療機関が人材紹介会社に支払う手数料の金額も高額になります。他の業種に較べると医師は短期での離職になりがちで、これが悪質で暴利をむさぼっているように見え、病院経営を圧迫する要因になっているということで医療機関から厚労省に問題提起されているとのことです。
 
以前、このコラムで申し上げたことがありますが、欧米の人材紹介料率は日本の半分程度で運用されています。それが可能なのは事業者が多いための過当競争からではなく、雇用流動性が高いゆえ、すなわち転職回数が多いゆえのことです。私たちがいただくコンサルフィーも雇用流動性や人材市場の需給バランスから見ることが大事だと思います。人材流動性が高いところは料率を低く設定するべきですし、採用難易度が高くフィーを払っても採用したいケースでは料率を上げることも問題ないと考えます。
 
人材紹介会社のエージェントは企業等から厳しいご指摘を受けないように引き抜きのような行為を戒めるべきですし、少子高齢化で人材流動性が高まるなか、一度採用した人をずっとつなぎとめておくということがいかに難しいかを意識せねばなりません。企業等のクライアントに、採用してもらった人をいかに気に入ってもらい、本人に長く勤めてもらうための待遇も含め、職場環境の整備に多くの努力を払うことが必要だと思います。求人側と求職側の双方の努力によって、この問題は解決されるべきだとニュースを見て感じた次第です。