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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第3回
2016.03.23

負けるが勝ち!東京エグゼクティブ・サーチ事件

今回は日本におけるヘッドハンティングの歴史のなかで、特筆すべき出来事についてご紹介しましょう。それは「東京エグゼクティブ・サーチ事件」というもので、報酬の支払いを拒否するクライアントを、私ども東京エグゼクティブ・サーチが提訴した裁判です。

東京エグゼクティブ・サーチ株式会社が設立された1975年頃、ヘッドハンティングビジネスは「有料職業紹介事業者」だけが行える労働省(当時)の許認可事業でした。そして当時の紹介手数料は斡旋した求職者の年収の5%(法定手数料)という上限が定められていました。これではビジネスにならないということで、東京エグゼクティブ・サーチでは年収の5%にコンサルティング料25%をプラスし、合計30%を報酬として頂戴していました。

ある日、クライアントであった某医療法人に医師を紹介し、いつものように契約書に記載された紹介手数料5%とコンサルティング料25%の合計30%を請求したところ、思わぬ展開となります。その医療法人は「東京エグゼクティブ・サーチから確かに人は紹介されたが、コンサルティングに関してサービスは受けていないので、紹介手数料の5%のみ支払う」と主張したのです。実際に支払われた金額も5%のみだったため、すぐに弁護士を立てて督促しましたが、頑なに支払いを拒否されてしまいました。

そこで私ども東京エグゼクティブ・サーチがその医療法人を東京地裁に提訴したのですが、この件が思いもかけず大きな反響を呼び、テレビや雑誌で盛んに取り上げられることになりました。論点は「契約書順守の重要性」と「サービス提供についての解釈」だったものの、審理が進むうち、紹介手数料が5%に制限されていることの是非に論議が沸騰したのです。そのなかで労働官僚や労働問題に詳しい学者の多くは東京エグゼクティブ・サーチの主張を理解し、味方として論陣を張ってくれました。

しかし裁判は1審東京地裁と2審東京高裁で敗訴。最高裁大法廷でも8対7で惜敗しました。結果は不本意なことになりましたが、この裁判をきっかけにヘッドハンティングやスカウトの社会的認知が進み、職安法が2度にわたり改正されて、手数料の上限が引き上げられるなど業界の近代化に大きく寄与しました。ちなみに現在、紹介手数料は上限が撤廃され、当事者同士の交渉に任されています。

東京エグゼクティブ・サーチ株式会社の創業者は2005年に旭日雙光章を受章しました。この裁判をはじめとした積極果敢な取り組みで業界の地位を高めたことが高く評価されたものと思われます。ヘッドハンティングと東京エグゼクティブ・サーチの約半世紀にわたる歴史のなかで最も意義ある戦い、それが東京エグゼクティブ・サーチ事件だったといっても過言ではないでしょう。