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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第27回
2019.06.28

採用力は社長力

私はこれまで多くの顧問先で採用のお手伝いをしてきました。その多くはいわゆる中堅企業が対象です。ひとつひとつの現場を振り返って考えてみると、人材の採用力はイコール社長力だと確信を深めています。
 
採用の成否は景気の影響も受けます。好景気のとき求職者はどこでも引く手あまたですが、どうしても必要な人材を採用したい場合、厳しい競合を勝ち抜いて採用しなければなりません。ところが企業は自分たちのことを主観的に見ているせいか、自らを過大評価しがちです。自分たちの会社を客観的に分析し、何も知らない求職者にきちんとプレゼンテーションするということができていないのです。そのような状況で重要なポジションを埋めるべき「これ!」という人材に出会ったとき、中堅企業の場合はその人に来てもらうために経営トップの陣頭指揮、総大将の出陣が欠かせないと考えています。私はこれまで多くの社長に自ら出陣するよう訴えてきました。
 
たとえば地方都市の中堅企業が、首都圏で活躍する優秀な人材を経営幹部として招き入れようとする場合、私は必ず社長を説得して首都圏での出張面接を実施するようにしています。そしてサプライズで求職者の居住地の近くまで社長に出向いてもらい、自分の会社のPR、仕事への熱意を語ってもらうようにしてきました。もちろん最終的には本社に招いてよく見てもらった上で最終判断をすることになります。
 
従来、面接というのは求職者が企業の本社等に出向いて行うのが一般的ですから、どんな小さい会社でも社長が遠方から自分のために出向いてきてくれたというのは、求職者の気持ちやモチベーションを刺激するものであり、そういった熱意を行動で示すことが採用を勝ち抜く上でのひとつの方策となります。私は必ずこのことを伝えてきました。
 
さらに採用については「人任せにしない」ということが大事です。私が常々思っていることですが、組織において社長が100のことをプレゼンテーションできるとしたら、どれほど優秀な番頭さん(専務、常務など)でも、社長の60%程度のことしか表現できないと考えています。それが人事部長クラスになれば、社長の30%程度に目減りしてしまうものだと過去の何百何千の経験から考えています。
 
ということは、権限移譲とか聞こえの良い理由で採用を経営幹部や人事に任せたとしても、どうがんばってもその熱意をすべて伝えることはできないということです。これは好景気、不景気関係なく、採用が上手な会社、次々に「これ!」という人材を獲得して業績を伸ばしている会社は、ほぼ間違いなく社長が陣頭指揮をとり、面接の現場に出てきて、クロージングまで努力されています。
 
好景気での採用というのは、会社にある程度の規模やブランド力がないと勝ち抜くのは困難なので、これをお読みになっている社長で耳が痛いと感じる方がいらっしゃったら、せめて幹部採用に関してだけでも、社長が必ず陣頭指揮をとり、面接するということを肝に銘じてみてはいかがでしょうか。
 
もうひとつおすすめしたいことがあります。求職者の家族も含め、社長夫妻と会食の場をセッティングするのも私たち東京エグゼクティブ・サーチのお家芸のひとつです。社長と求職者の会食というのは珍しくありませんが、求職者の家族まで招待し、にぎやかに食事を伴にするというケースは他ではあまり見かけません。
 
社長というのは畏怖の念を持って見られるものなので、こうした会食などの機会に親近感を持ってもらうのは有意義なことです。社長も人間ですから実は長所もあれば短所もあります。家族を含めた会食というのは、良いところを見せるだけでなく、たとえば社長が恐妻家だったりする姿を見せることも含みます。社長がこうした「素」を見せるのは、演出効果だけでなく、人と人のあり方の原点として大事なのではないでしょうか。このような機会をつくることを私は強く推奨しています。
 
中堅中小企業が人材を獲得するにあたり、私どもは総合的な面からサーチしてご紹介しています。ですが、会社の魅力不足や伝達不足で求職者が辞退してしまうことも多いため、そのなかで会社に勝ち抜いてもらうために、こういうこともやらなければならないということを理解していただきたいと思います。身の丈を超えた人材を獲得できている会社は、これらができています。中堅から一気に認知度の高い会社に駆け上がってくる会社は、こうした努力をしているのです。人間として素のままを見せられるような魅力的な社長であれば、自ら求職者の懐に飛び込んでみることをおすすめしたいと思います。