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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第26回
2019.06.21

好景気のときは採用を抑える?

現在は好景気が続き、いざなぎ景気を超えたといわれています。有効求人倍率も過去最高水準となり、採用マーケットは新卒・中途に関わらず活況を呈しています。一般的に好景気になればモノが売れて消費も回るようになるため、企業は人手不足の傾向から採用に前向きになり、企業間で人材獲得を競うケースが多くなります。
 
私はこれまで長い間サーチビジネスに従事してきて、採用については株式投資と同じようにあえて「逆張り」を提唱してきました。どういうことかといいますと、好景気になると労働力は売り手市場になり、求職者は条件や待遇についてどうしても強気になります。また企業が内定を出しても優秀な人材ほど様子見をするようになります。そのような状況になると、企業側では「採用人数が結果的に予定数に満たなかった」という事態が起きてきます。大企業やブランド企業はそれほど好不況の波の影響を受けないかもしれませんが、日本で99%以上を占めているのは中小・零細企業。こうした企業には好況のときほど人が来てくれないということになります。これは世の中全体がそういう状態になっているということで、そのなかで個々の企業は採用に努力していく必要があります。しかしなかなか計算どおりにいかない部分も多くなります。そこで私は「きちんと内部留保を蓄えておいて不景気のときこそ攻撃的な採用をする」、そして「空前の好景気のときは採用を抑える」ということを顧問先に推奨しています。これが「逆張り」ということです。
 
不景気のときは、リストラなどで放出された人材、好景気のときには出てこないような人材が驚くほど採用市場にあふれかえります。典型的な例として、リーマンショックの頃は「こんな人まで半年も仕事が決まらないのか」と思うような、若くて優秀な人材が採用市場に留まっていました。普段ならまったく人が集まらないことで有名なある企業のひとつのポジションに100人以上が応募するという事例も目の当たりにしました。こういう状況においては「みんなと逆のことをする」というのが正しい方策だと考えます。株式投資ではみんなが買っている高値のときに売り、売っている安値のときに買うわけですが、採用においても「逆張り」のメリットは大きなものがあります。
 
好景気のときは企業に浪費癖がつきやすく、採用に関する広告宣伝費、限度を超えた節税のための無駄づかいがよく見られます。しかし資金が回っている好景気のときほど、将来の採用費を社内留保に貯えておくことが必要だと思います。
 
不景気のときは人も選びやすく、オファーの金額も下がり、それでも優秀な人が来てくれます。さらに、そういう時期に採用してくれたということで求職者の方々は恩義に感じ、入社後のパフォーマンスが高まるということがデータにも表われています。
 
採用に課題を抱えている企業は、もう少し大きなスパンで見て、有利な採用を心がけるべきではないでしょうか。不景気も好景気も永遠に続くものではありません。新卒・中途を問わず、採用に力点を置く時期を考えてみるのもよいと思います。例えば楽天やユニクロなどのような短期間でグローバル化していった企業は、おおむね逆張りで採用に取り組んでいます。彼らはリーマンショックの際に大量に人を採用し、好景気のときは兜の緒を締めている会社です。
 
社員が数人という会社では景気の影響を受けにくいかもしれませんが、新卒採用を定期的に実施しているような中小企業であれば、これまで述べたように、景気の動向に沿った逆張り採用をしてみてはいかがでしょうか。そうすることで不況ならではの思わぬ逸材を獲得することができるかもしれません。