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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第89回
2023.08.11

SNS経由のスカウトは本当のスカウトと呼べるか

きょうお話しすることはSNSについて少々懐疑的な内容になるかもしれませんが、特に皮肉でもなく、誹謗中傷するわけでもありません。インターネットやSNSの普及で、昔と違って見知らぬ方にも連絡を飛ばしてみることができるようになりました。それに合わせるかのようにいろいろなダイレクトメッセージやプロモーション案内が大量に届くようになりました。最近では人材のスカウトでもSNSを使ってダイレクトにお誘いが飛び込むようになっています。一例を挙げるとFacebookは「ともだち」とつながっていなくても、メッセージを送る側が数百円の料金を払えばオファーを飛ばすことができます。ただし「迷惑メール」と判断されて気づかない例もありますが、それはごく少数のようです。また個人名を隠しているtwitterやInstagramでも、掲載内容を見てダイレクトメッセージを飛ばし、接触を試みることも難しいことではありません。


日本の人材市場でよく知られているSNSにLinkedInというものがあります。これはアメリカで生まれたビジネス特化型のSNSですが、なぜか日本では転職をテーマにしたSNSと捉えられています。ここにも多くのスカウトが届いています。また就職や転職の話題を前提としないFacebookやtwitterでも大掛かりなスカウトが飛び込むことがあります。テレビやネットのコマーシャルでおなじみのビズリーチは、自分のキャリア情報を自分から登録し、企業からのオファーを待つという仕組みです。すぐに転職する・しないにかかわらず利用できるので気楽に登録できます。


このようなSNSに送られてくるDMというのはまことしやかに「あなた様のことをよく存じ上げている」とか「ある会社があなた様のような人材を求めている」などと書いてあって、一見すると成否の判断が難しいようなパターンもありますが、大半はじゅうたん爆撃的にロボットなどを使ってデータを抽出し、多くの方に送られているメッセージである可能性が高いといえます。もちろん、そこから送ってきた案件に対して接触し、話が発展するというケースもあるでしょう。人は会ってみないとわからない面もありますので、想定外の良いご縁になることもありえます。そうしたチャンスを否定するものではありません。


私どもTESCOが求職者の方からいろいろなお話を伺っていると「自分は特別にスカウトされた」とか「指名スカウトのような形で誘いを受けた」というお話をなさる方がいらっしゃいます。しかし少し突っ込んで詳細を伺ってみると、ほとんどが本来の経歴や実績を熟知した上でのスカウトではないことに気がつきます。それが一概に悪いというわけではありませんが、SNS特有の本物とは言いにくいオファーであったりします。


古今東西、ITの進化などに関わりなく、本当のスカウト(ヘッドハンティング)というのは、対象者の仔細な経歴と実績を熟知し、有益な提案をしてくれる案件、そして「なぜあなたを指名したか」という点について、エージェントもクライアント企業もまったく同じレベル感で話せるということが前提になります。ですからたとえSNSでもそのレベルまで到達していないということは、本当のスカウトではないということです。厳しいことを言うようですが、多くの場合あくまでも求職者を集客するためのお誘いなのではないでしょうか。ですからここで「トップレベルのキャリアのなかでスカウトを受けたことがある」とか「ヘッドハンティングされた経験がある」と安易に表現してしまうと、そのレベル感のなかで誤解を受けたり、恥をかいたりすることもあるので注意しましょう。たとえ悪気はなかったとしても、微妙な表現には配慮するべきだと思います。自らを誇大広告しているとか自己顕示欲が強いとか、要らぬ誤解を受けるのは避けたいものです。以上のようにSNS経由のスカウトについてはまだまだ課題が多いと感じています。