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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第87回
2023.06.13

経営陣によるヘッドハンティングが失敗するパターン

今回は社長のスカウティングや役員のヘッドハンティングでよくある失敗の典型的なパターンをご紹介しようと思います。失敗について語るのは読者のみなさまには違和感があるかもしれませんが、これは多くの会社で発生していることなのであえて取り上げたいと思います。ネガティブな話題のように聞こえますが、時には反面教師も必要です。


ベンチャーやスタートアップの企業によくあることですが「社長が技術者」というケースがあります。社長に紐づいている技術が、会社が産声を上げて成長する源泉であり、創業の頃から二人三脚で歩んできた役員がベースになっていることが多いものです。そこからすぐに「IPOをめざしたい」となりがちですが、こうした企業は売上10億円あたりが踊り場になります。これまで求められた人材と、これから必要とされる人材が違ってきます。創業では能力が足りていても今後は未知数。人間的に魅力があっても、スキルとノウハウに不足が出てくるようになり、年齢的にも伸びしろがなくなってきます。会社を大きくするには経営幹部を抜擢して採用しなければなりません。


私どもTESCOに相談に見える経営者のみなさまは、会社の次のステージについてビジョンを熱く語り、外から人を入れることについても猛烈な使命感を持っています。そういう言葉を素人はそのまま鵜呑みにする傾向があります。しかし事務的な手続きを進めていくと、ナンバー2を入社させることに社内で合意が取れていないことが多々あります。それで騒動になって社長は困惑します。こういう時に社長がどうするかというと、お目当ての人物を既存の役員の下に入れて「実績を挙げてから昇格させる」という逃げ道に踏み込みます。これは新天地にチャレンジする人にするとモチベーションが大きく下がるやり方です。


会社は現状の役員以上の能力を求めているのに、候補者は役員よりも低い地位に置かれ、成功したら役員に上げますと実績を求められます。もちろん入社の際はポジションも収入も現役員より低く抑えられます。これでは本末転倒で堂々めぐりになるということに会社は気づいていません。今の役員が結果を出せるくらいなら人は要らないのです。結果は言うまでもありません。双方のギャップで優秀な人がいなくなってしまいます。能力が高い人に対して「安い年収で一生懸命働いて奇跡的な実績を出せるように頑張ってください。もちろん昇給も用意しています」と提示するのは一見筋が通っているようですが、これでは本当に優秀な人は誰も寄り付きません。本当に能力のある人は余程のことがなければリスクを犯して挑戦するメリットを感じないからです。最初から実力が発揮できるポジションが与えられないとチャレンジできません。


大企業も中小零細企業もこのような問題を抱えていますが、私は簡潔に次のようなアドバイスをしています。
・社長は腹を括って権限を委譲すること
・ふさわしい地位と年収で入社してもらうこと
・結果どうこうではなく人物を評価すること


外から優秀な人を招くのがなぜ難しいかというと、もともと地位と年収が高い人と、それが抑制された人が混在するからです。この二つの存在は人によって明らかに持ち味が違います。場合によっては採用基準を下げなくてはなりません。それなのに雇う側からは同じに見えてしまうのです。この点も理解できていない社長が多いようです。幹部を採用する際は雇う側が雇われる側の立場に立ってきめ細やかに配慮しなくてはなりません。企業がステップアップに成功するかしないかは、ここに集約されていると思います。


以上