転職希望者 採用応募 企業担当者様 お問合わせ
  • 転職希望者採用応募
  • 企業担当者様お問い合わせ

社 長 コ ラ ムCOLUMN

第80回
2022.12.23

人材争奪戦を避ける方策

人材争奪戦を避ける方策


先のコラムでも触れましたが、日本経済の水面下では企業間格差が広がりつつあります。規模に関わらず魅力的で成長の期待される企業からは、労働人口の減少と相まって、新卒・中途を問わずにオファーが殺到しています。昔からそのような傾向はありましたが、この10年ほど採用戦線は熾烈になってきたようです。


私たちは書店などで成功した人の記録を見ることがあります。その一方で残念ながら競争に打ち勝つことができなかった多くの事例はあまり目に触れることがありません。同じように採用に成功したモデルケースは注目されるものの、その背後では激しい人材争奪戦が繰り広げられており、すべての会社が勝ち抜けるわけではありません。採用の世界で「人はご縁もの」と言いますが、ご縁がなく撤退していくケースもあるわけです。


現在の日本は、若年層の労働人口が減少し、総人口減も進み、移民や外国人の登用にも消極的です。そのような状況で、業界によっては1人の優秀な人材に100社以上のオファーが入ることも珍しくありません。多くの企業が「この人なら欲しい」とか「この人なら待つ」と言い、同時期に同じようなオファーを用意しています。売り手市場、買い手市場というのは相対的に平均的な人材を対象にして考えるものですが、この場合はごく一部の優秀な人だけを対象とした売り手市場なのです。


そうなると「欲しい人材を取れない会社は、いつまでも取れない」ということが起きてきます。プロ野球のドラフトで欲しい選手のクジが永遠に当たらないという状態です。企業もブランディングで勝ち抜けるのはごくわずかで、大半の会社は「選んでもらえない」ということになります。かつては採用に予算を投じて一生懸命取り組めば一定の成果がありましたが、現在はその構図が変わったと思います。どうしても人が採れない時は、あまり大きな声で言えませんが「スペックを落としましょう」ということになります。しかしそういう方針を取る優秀な会社はほとんどありません。


私どもTESCOの業務にも関連しますが、大事なのは「どこからも声を掛けられていない優秀な人材」に独占的にアプローチして交渉権を得るというのがひとつの方策です。世の中には転職する気がなくてもSNSなどにキャリアや個人情報を発信している人がいます。その人には何らかの方法で声を掛けやすくなっているはずです。逆に自分の情報をわずかでも公表することに否定的な人もいます。その場合はエージェントの力を借りて接触する手があります。未経験のキャリア構築に手を貸すわけですが、そういう人は他と接触していないため初めは独占的交渉権を得ることができます。ただし時間が経過すると他社への応募なども視野に入りはじめ、後出しジャンケンに負けるリスクも生まれます。独占的な立場にいるうちにスカウティングを一気に進め、合意まで持っていく腕っぷしの強さが必要になります。今ある情報から掘り出し物の人材を探すよりも、ほとんどの人がまだ接触していない初めのうちにアプローチすること。いわば「農耕民族から狩猟民族になれ」という意識転換が企業には求められているのではないでしょうか。


以上