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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第79回
2022.12.13

単価を上げられる会社は元気

2022年の夏から秋にかけて急激に円安が進み、日本経済に対する不安が各メディアで報じられました。この原稿が掲載される頃は情勢が変わっているかもしれませんが、現時点での所感を述べてみたいと思います。


私は顧客企業の経営者とよくお目にかかりますが、この円安によって数か月で経済状況が極端に変化したという話はありませんでした。しかし踏み込んで企業の内情を聞くと、表面に出ている決算等の数字よりも水面下での企業格差が広がり、弱肉強食が進んでいるようです。もちろん業種によって状況は異なるので安易に語ることはできませんが、注視したいところです。
国外で利益を上げている企業もあるので一概には言えませんが、私どもの顧客企業に見られる傾向としては大部分が国内需要で売り上げている企業です。ところが、ここにきての円安もそうですが、今年は異常な出生率の低下や増税への懸念など良くないニュースが続き、人口も確実に減少しているので、どうしても日本経済の先行きが危惧されることになります。国内で商売していると成長が鈍化するどころか、縮小していく可能性が高いのは明らかです。


問題は同じことを続けるのにこだわり、現状維持を目的とするような、変化を嫌がる会社があることです。良くも悪くも保守的な姿勢でいると、常連のお得意様を大事にするというフレーズのもと、それまでと同じように頑張っても確実に衰退していくことが目に見えています。かといって、すべての企業が外国商売に踏み出して外貨を獲得するわけにはいきません。結局、国内で商売していく企業が多いというのが実状です。


私どもTESCOが顧問となっている企業にも、一生懸命努力をされ、コストを削減してお客様に迷惑が掛からないように尽くしている会社があります。これは一見正しいことをしているように見えますが、成長する、変化する、という点で問題があるのではないでしょうか。この夏、気になったのは自信を喪失して活気が見えない会社が多かったことです。海外進出せずに国内という土俵で勝負している企業で、元気がよく勢いがあるのは「単価を上げていく」という姿勢を徹底して継続できる会社です。
これはサービスの付加価値を上げたら、単価に反映させるということです。品質を数字で表すとしたら、例えば前年比115%を実現する、すなわち品質を15%良くする、サービスを15%改善する、お客様からの評価を15%向上させるなど、付加価値を価格に転嫁して上昇させることを意識し、それをお客様に納得していただくことができる、それが強い会社です。そういう企業は日本市場でもしぶとく生き残っています。これがサーチビジネスで多くの企業を拝見している私の所感です。


ビジネスマンのみなさんは懸命に努力をされていますが、だからといって以前と同じような成果を得ることは難しくなっています。かつてのような時代は過ぎ去っていて、努力に見返りがあるとは限りません。海外を含めた市場開拓や新規事業は聞こえがよいですが実現のハードルは高く、同じ商売で縮小するマーケットに生き残るためは、商品やサービスの質を向上させて単価を上げていくしかありません。ですから短期的、中期的な観点では見通しが立たなくなっているのかもしれません。
余談ですが、この夏、私はアメリカを訪問しました。そこで印象的だったのはファミリーレストランで家族が食事をすると1万数千円かかるという現実でした。それでもお店が繁盛してお客様が満足しているのは物価高と賃金がうまく連動しているからでしょう。単価を上げて、得た利益を賃金に回すというサイクルが機能しているのです。さて日本はいかに。


以上