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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第66回
2022.04.15

日本でヘッドハンティングの料率が高い理由

日本におけるヘッドハンティングの料率は、初年度年収の30~35%が標準となっています。この料率は世界でもトップクラスの高さです。なぜ日本でヘッドハンティングの料率が高いのか、ご存知でしょうか。このテーマに関心を持たれるのは求人企業または採用や人事を担当する方々だと思います。仕事を探している求職者にはあまり関係ないことですが、知っていて損はないと思います。


日本の人材紹介の料率は世界最高水準でありながら、最近、更に上昇する傾向にあります。これは世界的にめずらしい動きといえます。企業の規模、業種、地域などでばらつきがあり、一概には申し上げられませんが、全業種の平均値を見ると、やはり料率は30~35%となっています。
紹介手数料=初年度年収×料率(30~35%)
という計算式を入社の際の合意事項として企業はエージェントに支払います。日本の料率がどれほど高いかというと、例えばアメリカ合衆国では州ごとに法律が違うものの10%台。発展著しい中国や東南アジアでも10%前後です。これらと較べると日本の30~35%はいかにも高いといえます。なぜこうなったのでしょうか。


少しばかり自画自賛になりますが、私ども東京エグゼクティブ・サーチが某医療法人の不条理に対し法廷闘争を繰り広げた「東京エグゼクティブ・サーチ事件」という裁判の顛末も影響を与えていると思います。当時の料率の上限は5%とあまりにも低かったのですが、裁判を経て上限が徐々に撤回され、現在は上限なしとなっています。裁判については以前このコラムで概要を説明していますので、ご参照ください。

https://www.tesco.co.jp/column/%e7%ac%ac3%e5%9b%9e



さて、今のところ料率は高止まりしていますが、その背景には大きく2つの要因があると考えます。


(1) 低空飛行の雇用流動性
わが国の雇用流動性は先進国のなかで最も低いとされています。新卒定期採用という独自の文化も影響していますが、就職するとあまり転職しないということに尽きます。雇用流動性が低いと人材紹介単価も下がりません。言い換えると「料率が下がらないから流動性が低い」という面もあるかもしれません。


(2)大手人材紹介会社の功績
これは尊敬を込めて申し上げるのですが、大手人材紹介会社の大変な営業努力と圧倒的な実績が料率の高さを維持してきたと思います。採用単価の高止まりが維持されているのは彼らの活躍のおかげといっても過言ではありません。人材紹介の黎明期から活躍しているリクルート社などは、料率が下がることにブレーキを掛けてきました。なぜそれが可能だったかというと、ここでも新卒定期採用が要因としてあり、その時期に採用しないと若い人材が確保できないという特殊な構造があったせいです。


企業は料率が高いと感じても、大手人材紹介会社を敵にまわすデメリットを考えるとNOとはなかなか言えません。特に歴史と実績を積み上げてきたリクルート社が料率維持に厳しい姿勢を見せている以上、高い料率がスタンダードになるのも致し方ないということになります。ホワイトカラーの人材紹介をする業者は小規模事業者も含めて全国で1万数千社。これが厳しい経営環境のなかで生き残っているのは、高い料率があるおかげです。


一方で採用する側の企業から見ると、活躍が100%保証されているわけでもなく、中途採用で高い料率を払うことに関していろいろな声が聞かれるのも事実です。例えば医療分野では、採用単価が高いにもかかわらず、回転が速いことが指摘されるケースもあります。高額な手数料を払って獲得した医師や看護師がすぐ辞めてしまうのは、医療機関の経営にかかわります。会社も同様です。このような状況のなかで、料率はこれからどうなっていくのでしょうか。次回は料率の今後を考えてみたいと思います。