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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第65回
2022.03.24

経営者をめざすビジネスパーソンへ(後編)

前回の中編では、社長をめざすビジネスパーソンの準備や資質として、ソフト面の5項目を挙げました。それは(1)人の嫌がることを進んでやる、(2)心身の健康状態を常に維持する、(3)他人の幸せを喜び、不幸を悲しむ、(4)仕事以外の趣味をひとつ持ち、そこでアマチュアのトップレベルになる(5)部下の面倒をよく見る、というものでした。


この後編では引き続き(3)の「他人の幸せを喜び、不幸を悲しむ」という項目から解説したいと思いますが、別に宗教家に変身したわけではありません。企業の規模を問わずトップの交代を間近で見てきた私にとって、人事というのはひとことで言うと権力闘争でしかありません。老若男女に関わらず、そこが源泉になっていると言っても過言ではなく、実にドロドロした世界です。いろいろな意見があって「すべての人を疑え」という声もありますし、「明後日の敵を明日の友としろ」というアドバイスも聞こえます。しかし誰かに争いを仕掛ければ組織の消耗は避けられず、余計な寄り道をすることになります。今の時代に求められているのは、誰かが活躍した、業績を上げたという時に素直に祝うことができ、誰かが苦しんでいたら応援してあげられる人だと思います。そういう人格の方は多くの人に好まれます。経営者予備軍は能力があって実績があれば評価されると思っている人が多いのですが、それだけではないということです。


次に(4)の「仕事以外の趣味をひとつ持ち、そこでアマチュアのトップレベルになる」という項目です。私は経営トップに立った方々を長いこと見てきたわけですが、そこには驚くほどの共通点がありました。それは、どんなに仕事が好きでも、仕事に100近い時間を使って活躍していても、不思議なことに人間的な面白さ、人格的な味わいのある人は少ないということです。組織運営や人付き合いのなかでは、むしろ遊び心や少年少女のような心が人との付き合いの潤滑剤になっているように思います。TESCOが46年余の歴史のなかで経営者の属性を見たとき、文化であれ、芸術であれ、スポーツであれ、仕事以外で何らかの際立った活躍がある方ほど魅力的です。若いときは仕事100で余裕が持てないかもしれませんが、やはりトップに近づくと仕事だけではない何かが大事になるのだということを頭の片隅に入れておいてほしいと思います。


最後に(5)の「部下の面倒をよく見る」ですが、社長人事というものは、最後は数の論理で、多数派工作になります。主流派、反主流派、中立派など組織のなかの力学が結果につながります。少数の主流派というのは権力基盤が脆弱になるのでトップに選ばれにくくなります。やはり社長になろうと思うなら、若いうちから同僚や部下などの面倒を見て、派閥の領袖のような存在になることも必要です。会社組織というのは家族と違って未来永劫一緒にいるわけではありません。出会いがあれば、別れもあるわけです。そこでは利害関係が絡むことも多いので「この人についていけば会社も伸びるし自分も潤う」と思わせることが大事です。ボスには配分する経済的利益、ポストなどが必要です。会社でヒト、モノ、カネを自在に動かす力のある派閥の領袖的な親分肌であること、それが部下の面倒をよく見るという点に集約されていると思います。ここをはずすと単なる優秀なプレイヤーで終わってしまい、マネジメントに進むことができなくなります。経営者をめざすなら、この点は強く意識していただきたいと思います。


以上に挙げたハード、ソフトの要素をもとに、私はこう考えています。「社長をやってほしい人は、社長をやりたい人の100分の1しかいない」と。準備万端、堂々と社長になれる要素を持っている人は、それほど少ないということです。みなさまのご健闘に期待します。


以上