転職希望者 採用応募 企業担当者様 お問合わせ
  • 転職希望者採用応募
  • 企業担当者様お問い合わせ

社 長 コ ラ ムCOLUMN

第55回
2021.10.11

ビッグネームにどうアプローチするか

東京エグゼクティブ・サーチは、ヘッドハンティングの現場で大企業の社長交代という案件を扱うことがあります。社会的によく知られた経営者に接触を試みることも日常茶飯事です。いわゆるビッグネームの人物は名前が知れ渡っているので、調査、探索、接触は容易です。むしろサーチで難しいのは市場に露出していない「知る人ぞ知る」人物を探すこと。ビッグネームは会社に電話を掛けると秘書が出て、どこそこでお目にかかったなどと言えば簡単につないでもらえることも多いのです。こうしてすぐに接触できるビッグネームでも、スカウトとなれば接触のコツのようなものがあります。今回はそのひとつをご紹介したいと思います。


ビッグネームへのアプローチでもっとも威力を発揮するのが「紹介状」です。紹介状と聞くと病院などの事務的なものを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、こちらの紹介状はファーストコンタクトで接触の仕方を間違えると、機嫌を損ねられたり、警戒されたり、その後に影響することがあります。有名な人物だけに話がこじれると声を掛けている私たちのクライアントにも影響が及び、迷惑を掛けてしまう可能性があります。接触には細心の注意が必要になります。私たちがビッグネームにアプローチするときに考えるのは、弁慶の泣きどころがどこにあるか、すなわち「この人が頭の上がらない人は誰か」ということです。どんな有名な方でも、その方がお世話になっている顧客がいらっしゃいます。その方の会社から多くの商品を買ってもらっていれば頭が上がりません。しかしその会社もまたどこかから買ってもらっています。食物連鎖のようなものです。


ヘッドハンターはターゲットが有名であればあるほど多くの情報を入手できます。情報が多いので見込み発車で押しかけて接触することも可能ですが、それでは後の展開が難しくなってしまいます。そこで活用したいのが「紹介状」です。紹介状は「この人に会いたい」というとき、この人が一番断りにくい人からもらうのがコツです。私が調査の際に必ずメンバーに指示するのは、接触したい著名な経営者がいたとして、例えばその出身校はどこか。部活動とかゼミとかサークルとか、過去の経歴はどうか。先輩に当たる人で、当社が過去に接触して昵懇の人がいないかを徹底的に調べます。誰々さんの紹介状を持ってきましたと、その人に名前を出したとき、苦笑いしながらでも「その人の紹介だったら会わなくてはなりませんな」と言わせしめるところで勝負は半分が決します。そういう人を先に探し出しておいて、便宜を図ってもらう方法を考えるのが、ビッグネームへのアプローチのコツです。


ヘッドハンティングで社長をスカウトするような場合においては、ターゲットを見つけ出すことよりも、見つけたターゲットに接触した後の人間関係を円滑に運ぶことが大事です。そこまで想定したアプローチの方法を考えます。それがノウハウを積み上げることになります。ターゲットの先輩とか親しい人は同じくビッグネームの可能性があり、かなりの有識者の場合が多いので、そうした方々とは仕事の話だけでなく、雑談など会話で渡り合える人間力とコミュニケーションスキルを研鑽しておくことが大切です。仕組みとかノウハウで片づけられない奥深いところがあるのがビッグネームのスカウトです。いろいろなサーチ会社が上流のヘッドハンティングは単価が高いということで挑戦し、新規事業で取り組んでことごとく撤退をしているのは、仕組みの構築や人材探しが難しいのではなく、実際に接触をした後、互角に渡り合うヒューマンスキルを組織として身につけることができていないということが背景にあるのではないでしょうか。私たちはこれからも1通の紹介状の重みを感じながらビッグネームと交流していきたいと思います。