転職希望者 採用応募 企業担当者様 お問合わせ
  • 転職希望者採用応募
  • 企業担当者様お問い合わせ

社 長 コ ラ ムCOLUMN

第51回
2021.08.15

ヘッドハンティングのサービスに求められる変化

前回の続きですが、優秀なAさんを他社との獲得合戦で採用できる可能性が高くないと気づいたとき、企業はどう対処したらよいのでしょう。優秀な人材の採用をめざす企業が、私たちTESCOのようなサーチ会社に求めるものは、次のような考え方に基づくアクションです。Aさんの同僚で一切SNSなどの登録を拒んでいる人だけを発掘してきて、数十人リストアップし、他社がつばをつけない人材と独占的に交渉権を得られないものか、と企業は考えるようになっています。そして、そこがヘッドハンティングに求める基準です。そのおかげで採用活動の引き合いが猛烈に増えています。面白いことに引き合いが増えている企業の数は多いのですが、ここも二極化していて、ひとつは従来の「採用の分析はできていないけれど、人が欲しいのでとりあえずヘッドハンティング会社に接触した」というケース。もうひとつは、ビズリーチやSNSを背景とした厳しい獲得合戦が起きていることを理解した上で「優秀な人材を想定して他社と一切バッティングしない独占交渉権が欲しい。もちろん料金は払うから、そのプロジェクトを請けてくれないか」というケースです。ここでも二極化が見られるようになってきているわけです。


後者のような依頼は、以前は100社中1~2社しかわかっていない、かなり先端を走っている企業だけが使う手法だったのですが、最近はこの考え方がスタートアップの会社等にも知られてきています。そのため最先端の主戦場の争いが厳しくなってきています。一般的な人材紹介や中途半端なヘッドハンティングでは、お客さまが納得しなくなりました。単刀直入にいえば「この人はビズリーチなどのデータベースに登録しているか、いないか」を企業は知りたがっているのです。以前は採用できてしまえば結果オーライでした。いま企業は「この人の属性はどこにあるのか」を知りたがっています。最近の採用活動をショッピングに例えれば、富裕層の客が銀座の高級店に赴いて「これは世界に何個しかない」という限定品だけ欲しがるようなものです。どこでも買えるものは、仮に高いものだとしても欲しくないのです。この先鋭化した求人インフレは、この半年くらいで急激に起きてきた現象です。


最近の人材紹介会社の業績を見ても、激しい獲得合戦と別のフィールドで勝負ができる自社データベースを持っている企業は、それほどハイパーな人材でなくてもバッティングしない確率が高まるので、それなりに勝負になっているようです。あとは優秀なAさんをめぐる勝負を避け、Bさん、Cさんといった独自の人材にアプローチできる何らかの創意工夫をしている企業も健闘しているように思います。ここで特にお伝えしたいのは「中途半端なことをしている会社は全部だめになっている」ということ。高いか安いかだけでなく、オリジナリティを求めるという点での二極化、そこにもこだわりが強くなってきています。
私は、この傾向があと5年は続くのではないかと思っています。なぜかというと少子高齢社会のピラミッドが解消せず、若手の絶対母数が増えないからです。企業の競争関係は厳しくなるばかりですし、コロナ禍で勤務体系が変わったことも大きいでしょう。テレワークでハイパフォーマンスが出せる人、出せない人、その選別が企業側で進んでいます。外部環境が変化しても高いパフォーマンスを出してくれる人というのは、絶対数が限られます。非常に優秀で環境適応力が高く、そして年齢が若い。そうした人材の母数が急速に増える見通しがありません。それでいて外国から同じレベルの能力を持った人材を連れてくることに、日本企業はまだまだ寛容ではありません。しばらくは少子高齢社会に連動し、稀有な人材を奪い合う構図が続くと考えています。将棋に例えると、企業は飛車と角以外を取ろうとしないのです。そして大企業、中小企業、零細企業、ベンチャー企業、スタートアップ企業、そのすべてが飛車と角しか眼中にない時代になりつつあります。むかしは飛車と角を取れる会社はこのあたりという目安がありました。「うちにはそんな人は来てくれないから桂馬にしよう」という立場がありました。しかし今はすべての会社が同じターゲットをめざしています。その傾向が進んだため「ヘッドハンティング会社なら誰もアプローチしない飛車や角を持っているのではないか」という期待を持たれるのです。


ビズリーチに露出しているような人材は争奪戦が激しく獲得が不安定。しかし企業はその人を見てしまっているから、それよりレベルが下がる人材は採用したくありません。欲しいのは優秀なAさんだけ。これがこの半年の変化だと感じています。お客さまから求められたとき、Aさんに匹敵するBさん、Cさんを提案できるかどうかがヘッドハンティング、エグゼクティブサーチのテーマになってくるでしょう。私たちも時代の要請に応えていかねばならないと切に思う次第です。