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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第30回
2019.10.11

経歴詐称の現実

長年、人材紹介業を営んでいると、いろいろなことが起こります。ポジティブな話題ではありませんが、今回は私たちがときおり遭遇する「経歴詐称」の現実についてお話ししたいと思います。読者の方は驚かれるかもしれませんが、経歴詐称は実に採用候補者の10%弱に見られ、看過できない問題となっています。もちろんそのなかには大掛かりなもの、ささいなもの、故意であるもの、悪意のないもの、記憶違いなどが含まれます。採用候補者10人に1人の割合で、提出された履歴書や経歴書に何らかの誤りがあることになります。これは私たち人材コンサルタントから見ても大変驚愕するような高い割合の数字です。
 
採用候補者が学校を卒業され、社会人になられ、かなりの長い歳月が流れていたり、今の時代に合わせて何回かの転職をしたりしていると、経歴詐称が起こりがちになります。そこで多いのは、ほとんど悪意のない軽微なものになるのですが、よく見かけるのが在籍企業についての記載ミスです。ときおり問題になる例をご紹介しましょう。残念ながら短期間で離職したケース、たとえば試用期間中に退職した場合に「試用期間だったから」という解釈のもとに、その経歴を記載されない方がいらっしゃいます。こうした事例はたとえ書類上の不備であったとしても、経歴詐称と誤解されるおそれがあるので注意しなくてはなりません。
 
私たち東京エグゼクティブ・サーチが遭遇した経歴詐称のなかにも、2か月しか在籍しなかった会社を面談の際に口頭で省略したというものがありました。そこを詳しく問うと「その会社から、今回は試用期間だったからお互いになかったことにしましょう、と言われました」と弁解するのでした。しかし、そのようなことを会社側が言うはずはありません。このようにたとえ試用期間だけ勤務したとしても、それは経歴として正確に伝えなければなりません。
 
誰しも過去の経歴には隠したいことのひとつやふたつあるものですが、履歴書や経歴書に関しては公文書に近い公式書類になりますから、正確に記載することが大事です。在籍期間のずれなどにも注意しなくてはなりません。入社と退社を何回か繰り返した方の場合で、その時期が1~2か月ずつずれていたというようなことであれば会社側も理解してくれると思いますが、意図的に不十分な記載があったり、記載されていないものがあったりすると、悪質と捉えられる場合があります。
 
入社した会社で総務や人事の担当者が社会保険の手続きを行うときに、年金手帳の提出を求めることがありますが、こうした社会保険事務所の手続きで過去の履歴はほとんどすべて判ってしまいます。面接した人事部門等で気づかれなくとも、後々その照らし合わせが行われたときに、運が悪いと問題にされる場合があり、そこから経歴詐称が発覚するケースがあります。経歴詐称が発覚すると、企業によってはかなり厳しいペナルティを与えられる可能性があります。特に悪質性が高いと判断されると、最悪の場合は採用取り消し、雇用契約の解除に至ることがあります。経歴を記載する際は、決して楽観的な解釈をせずに、正しい情報を記載することが大事だと思います。