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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第70回
2022.06.24

経営幹部採用に対する建前と本音

極めて経営トップに近いポジションで採用が行われる事例を見聞することは少ないと思います。今回は最高幹部の採用にまつわるエピソードをご紹介しようと思います。経営幹部の採用では、会社や役員が奇怪な動きをすることがあります。本来、採用は年度予算で採用計画に基づいて行います。そこでポイントとなるのは目的達成のために必要な人材が充足しているか、不足しているかという判断です。採用は手段であって目的ではありません。条件、職位、採用基準を満たし、志望動機が明確であれば、話は進展します。ところが、その過程で職位が上がれば上がるほど不可思議なことが起きがちです。その原因は何なのでしょうか。


経営幹部の採用は重要かつ必要な行為で秘密裡にかなりの予算を投入して行われています。トップレベルの人材を採用するときは、まず“上”を決めないと組織の指揮命令系統で問題が起き、機能不全に陥る危険があります。しかし取締役会や経営会議の出席メンバーの間で全員賛成という案件はほとんどありません。重要なポジションほど確実に話が進むはずなのに、そうならないケースもあります。“上”に誰かが来るということは、権力が分散したり、利権を奪われたり、世代交代が進んだり、そのような事象がたやすく想像できます。最後は上層部の判断で採用が決まることが多いですが、期待していたうねりとか、パワーやスピードの向上とか、プラスの展望が見込めない事態になりがちです。経営幹部ほど会社の行く末に危機感を持っているはずですし、性善説で見れば、経営に寄与してくれるから、そのポジションにいるはずです。しかし権限を持ち、人望もあり、派閥も持っているような人が、あの手この手の権謀術数を用いて採用を壊しに動くことがあるのは残念なことです。

(実例1)
採用を阻止したい場合、逆に採用に積極的な姿勢を見せ、あえて多くの面接を実施し、あたりさわりのない理由(人間性や現況など)で、現在の幹部より人格や能力が下回っていると明示させます。そして現状維持が望ましいという機運を作り上げ、採用自体を潰しに掛かります。誰の沽券も傷つけることなく、愛社精神を見せつつ、狡猾に話を潰してしまうのです。会社の内情に詳しい人は、この動きに気づきますが、外部の人や、社内でも遠いセクションの人は裏事情に気がつきません。


(実例2)
優秀な人材が外部から来るとなると、既得権益を侵されたくない幹部が自社の発展より自分の権益を優先する場合があります。外部の人材がエントリーしても採用が進まない、もしくは検討が長期化するという現象が起きます。ポジション、ポスト、待遇が魅力的でも、表と裏の理由が混在している可能性があります。こうした裏事情については人材採用エージェントなどから情報収集してみるとよいでしょう。情報をエージェントがつかめない場合は案件自体に疑問符がつきそうです。


(実例3)
採用審査が進み、候補者が一本化するところで事態が逆転するケースもあります。求めるものが「実力本位」だったのに、途中で「協調性」に変わるなど、逆のベクトルに向かう不自然な動きです。採用もトップダウンで決めると言われていたのに、幹部で迎えるには役員全体のコンセンサスが必要で他の役員とも会って相性なども確認したほうがよいでしょう、ということになる例が多々あります。ごもっともに見えますが、誰かがこの話を潰しに来ている可能性があります。


このような方法で外部から招いた優秀な人材のモチベーションを棄損し、候補者が辞退したかのように見せかける策略が見受けられます。経営幹部の採用では、会社や役員の建前と本音をよく把握することが重要です。


以上