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コンサルティングレポートCONSULTING REPORT

第1回
2019.08.06

「加工専業から"ものづくり企業"への転換を支援」

 このプロジェクトは、西日本の地方銀行からの採用に関わる相談から端を発し、根源的な原因を業態転換というアプローチで解決に導いたというコンサルティングの一例である。

当該企業は委託でレーザー加工や切削加工(フライス盤)等を扱い、売上高は10億円超の規模。創業は1960年代と長い歴史があり、そのエンジニアリング技術に関しては定評があった。具体的には日系大手家電メーカーに、アクリルやポリマー素材を主剤とした量産が難しい一点物のサンプルやプロトタイプ品を加工提供するに高い評価があり、地域の有力企業に列せられていた。
 業績は堅調であったが、この企業のオーナーは自社の加工技術に誇りを持ちながらも、加工技術専業の将来性に疑問を抱いていた。「加工」という工程は必然的に他の製造業の下請けになることを強いられ、価格競争力のイニシアティブを取ることは難しかった。また自社製品を持たないビジネスモデルのため技術に比して知名度は低く、採用や新規チャネルの開拓にも負の影響を及ぼしていた。

 前記の通りこのプロジェクトの始まりは、地方銀行からの相談(工場長ポジションに関する採用について)であったが、この企業の本社、工場を視察し1週間程の断続的なヒアリングやビジョンの再設定等行った結果、この企業の本質的なニーズは、ものづくり企業への転身であることが、明確に共有できた。
 そこで弊社はこの企業の生産体制や財務諸表を、同企業経営陣の許可に基づき、詳細なファクトの確認を行った。それにより浮かび上がってきた特徴は、数十年に渡り積み重ねてきた豊富な内部留保と、その地方では稀有な高水準の生産設備であった。
 例えば同社工場は用地、施設共に十分規模と現代的なインフラを擁していた。資金的にも追加数十人の開発部門を新設することが可能で、売上高が一桁大きい企業でも有することが稀な先端レーザー加工機を保有していた。
 ただ加工業に特化していた歴史から、自社単独の製品開発のためのナレッジが大きく不足していた。特に基礎研究に類する部門、人材は皆無に近く、仮に開発に経験を有する精鋭の経営幹部を登用しても、短期的に研究開発の部門を立ち上げることは不可能であると判断せざるを得なかった。
 伝えにくい判断ではあったが、同社経営陣とその認識を共有し、高いフィーで経営幹部を登用することは避け、長期的な視野のもと5年計画を策定。ものづくりに長けたメーカーの定年退職者を、顧問として廉価で複数名採用し、組織の再編を第一に考えることに切り替えた。

 この方針に基づき、家電大手メーカーと大手工作機械メーカーのOBの二人を顧問として登用。この登用の主眼は、二人に開発を託すのではなく、開発可能な環境のための組織再編であった。
 当初は1年程の契約を想定していたが、組織の再編により想定より短期に自社製品開発にも成功し、二人とも契約の更新が長期に渡った。内一人は顧問ではなく、やがて経営陣としての参加に変わり、開発体制の一層の向上に寄与した。
 また弊社としては、顧問二人の参加初期にはアドヴァイザリーとして、経営陣と顧問との融和、連携をサポート。その後は人事的な視点からの組織管理、コスト管理等のコンサルティングを一定期間続けた。

 このような関わりは、潤沢な経営資源を有する上場企業クラスでは多くはない。だが中堅企業は有力な技術や資金もしくは営業チャネル等を持っていても、何かしらの人事組織的な瑕疵が、ボトルネックになっていることが珍しくはない。上記のプロジェクトは採用、人事組織的な観点からの経営コンサルティングが、根源的な療法となる一つの好例となった。