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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第97回
2024.01.25

もしかすると景気後退のサインかも

2023年の春になりました。今期の経済動向が気になるところですが、人材業界では金融業界とまた違う視点から、景気の先行きを敏感に感じ取ることがあります。この3年ほど多くの企業が新型コロナウイルス感染症に翻弄され、前代未聞の数年間を過ごしてきたはずです。そして未だに厳しい状況に直面している業界も多いと思います。特に資源高や物価上昇で日常生活に厳しさを感じている人も多いのではないでしょうか。


その一方で新しいビジネスモデルが生まれ、かつてない貴重な価値が提示されたこともあると思います。そこを先取りすることで逆風に負けずビジネスを大きく飛躍させた企業もあります。この数年間、大企業の景況感はそれほど大きく悪化していませんでしたから、報道などで伝えられる実体経済との乖離に違和感を持たれた方も多いと思います。


前置きが長くなりましたが、今年になってからアメリカのIT企業大手で、この10年ほど見掛けなかったリストラの話題が目につくようになりました。聞くところによるとIT業界では5000人から数万人規模の人員整理に踏み出すとのことです。アメリカのIT企業については景気を牽引してきたというと大げさかもしれませんが、これまで業績を伸ばし続けてきた典型的な業界であることは間違いありません。ところが今年に入ってから発信される情報は非常に消極的でネガティブなインパクトが強くなっています。


2008年9月のリーマンショックの際に、私どもの業界が学んできたことのひとつなのですが、アメリカのIT大手や欧米の外資系金融の景気後退や人員削減の報道から、約8か月から10か月ほど遅れる形で直接的に日本にも影響が及ぶようになることが過去の統計から読み取れます。この8か月から10か月という数字にどのような根拠があるのか詳しくは承知していませんが、私も経験則を元にした感覚で「ありうること」だと感じています。例えばはるか遠くの地で大きな地震があり、津波が遅れてやってくるような印象です。時間差で何らかの影響が現れてきます。しかしこの背景には心理的なものがあるかもしれません。


日本は島国ということもあり、このような景気に関する報道を見ても「対岸の火事」になりがちです。すなわち遠くで起きた大きな出来事がなかなか自分たちに影響する現実に思えない傾向にあります。しかし企業は個人よりも、そうした情報に敏感なところがあります。アメリカのリーディングカンパニーであれば「こういうことになっているのだから、我々のところにもすぐやってくるのではないか」と心理的な要因から採用や設備投資の抑制をはじめます。そのタイムラグが8か月から10か月ということなのではないでしょうか。


日本でもスタートアップレベルの企業が、この数年、コロナ禍を乗り越えて大きく飛躍してきたケースが多いのですが、2023年3月には代表的ないくつかのベンチャー企業が主要事業所を閉鎖し、事実上数百人程度の人員整理に踏み切るという情報も入っています。これなどは前述のケースと同じような動きと言えるのかもしれません。現在のところ広い視野で眺めても景気を大きく押し上げるような材料は見出しにくいため、2023年の後半は一気に景気後退に入るのかもしれません。こうしたネガティブな予想が外れるに越したことはありませんが、そのような事態を見越して「備えあれば憂いなし」の準備を整えておく必要があるかもしれません。