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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第94回
2023.12.07

経費濫用と公私混同② 素行の問題

経費濫用と公私混同についてのアドバイスに関連して「素行」の問題にも言及しておきたいと思います。ビジネスの世界でも最近は素行を重要視する傾向が強くなっています。その不祥事で最も多いのが会社から託されている金銭にまつわる横領でしょう。たとえパジェットの範囲内に収まっていても、支払いの項目が業務の範疇を超えていては不自然です。例えば交通費の私的流用などは罪悪感もなく手を染めてしまうのではないでしょうか。また社用車の不正使用で業務先と行き先が違うケースなどもありがちです。スケールの大きなものでは必要性が明確に判断できない海外出張なども該当するでしょう。よくある手口ですが飛行機で出張を繰り返し、航空会社の上級ステータスを確保するという方法もあります。これらは仮に会社のガイドラインに収まっていたとしても問題視される事例です。こうした不正行為に慣れてしまうと経費の架空計上などにエスカレートし、犯罪の域に達する恐れがあります。ですから会社側にいろいろと詮索されるのも無理はないと思います。


素行という問題を考える時、もし家族を持った人物であれば「素行のなかで家庭円満をはみ出していないか」が問われます。それぞれの家庭について他人が干渉する必要はありませんが、どんなに仕事が出来ても法律でいうところの不貞行為に該当する行動を取っていないかを観察されます。仕事の実績があれば一定の役職までは大目に見られるかもしれませんが、役職が上がるにつれて会社の対応は厳しくなります。自分の行動が見られていて、このような素行や家庭のネガティブな面で失脚する人がどれほどいるか、あまり意識されていません。このケースでは本人が気づかないうちにトップ人事から外され、失脚してサラリーマン人生を終えていくことになるのです。


この素行という問題が社内外で表面化するには背景があります。賢明な読者のみなさまはもうお気づきかもしれません。その人物が属しているグループと違う勢力が足を引っ張っているという可能性です。派閥の長が有利になるように社員が別のグループのスキャンダルを探しているケースも多いのです。不祥事が起きた時に世間体を取り繕うために膿を出すというのは建前で、その人の上司のステップアップを快く思わない反対勢力の存在があり、本音としては何かネガティブなものはないかと探しているケースがあります。そういうところで素行の問題が明らかになると、他愛のない事情でも選考からはずされてしまいます。これまで引き上げてくれた役員が、素行に問題ありの事実を突きつけられて、もうその人物を推せなくなるということになります。つまり誰かの素行が社内政治の闘争材料になる可能性があるのです。すぐそこに見えているポストをフイにするのはもったいない、しかしポストに近づいて行けば行くほど素行が問題になりかねないわけです。ですから上昇志向のビジネスマンは自分の素行をよく見ておくことが肝心です。余談ですが私は仕事に活かすため探偵学校に通ったことがあります。そこで学んだことのひとつに「素行不良があれば1週間尾行すれば露呈する」ということがあります。このように「何かマイナスはないか」と思われて探されたときに引っかかってしまうのが素行です。時代錯誤かもしれませんが会社によっては「結婚していない」という理由でエグゼクティブに登用しないところがあります。結婚していない人物は何らかの問題を抱えているのではないかと勘繰られるのです。経費濫用、公私混同、素行と話題が広がりましたが、こうした現実の機微を知ることもエグゼクティブにとって必要なことだと思います。