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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第82回
2023.02.10

採用できない企業のネガティブポイント ①「トップの介在度が低い」

企業が採用に際してネガティブポイントを持っていると、現在の採用トレンドからいつしか遅れてしまい、人材の採用確率が著しく低下するという問題を抱えることがあります。私どもTESCOでは、そのような事象が発生している企業
をスコアリングして評価した結果、問題のネガティブポイントは13項目あると分析しました。そのうち特に重要と思われる3項目をこのコラムに3回連載でご紹介したいと思います。13項目のネガティブポイントと言っても、これらはバラバラに存在するわけではなく、相互に関連性があるのが特徴的なところです。ある1項目が非常に優れている企業は、他の項目も含めて全体的にバランスが良いなど、密接にリンクしていることが見て取れます。

私は「企業の採用力」イコール「企業の競争力」と断言するほど採用原理主義者ではありません。企業経営にとって人が重要なのは言うまでもないことですが、人材ビジネスの従事者のなかには、かなり原理主義的に採用を強調される方がいらっしゃいます。その点、私は事業戦略や組織についてバランス重視のポリシーを持っているので「人がすべて」と極端な主張はしていません。これまでコラムで触れてきたように、少子化など採用にまつわる諸要素で採用の難易度が高くなっているのは間違いありません。一般的に「自社はどうか」と絶対評価しやすく、相対評価しにくいのですが、他社を観察すると社長や役員が採用の場に出てきて積極的に関与しているケースが増えていることに気がつきます。

トップの介在度が著しく低いと、付帯していろいろな問題を誘発しやすいのですが、なぜ介在度が低くなるのでしょうか。その原因として、まず企業規模が大きくて採用の決裁権限が委譲されているケースが挙げられます。そこでは採用にトップが首を突っ込むと、むしろ組織を混乱させると考えられています。次に、そもそもトップが採用に関心を持っていないケースがあります。すなわち人や採用などのHRに重きを置いていない場合です。私どもTESCOが以前お付き合いしていた化粧品メーカーでは、社長自ら広告宣伝に高い関心を示していましたが、人材や採用に対する関心は低く、面接に入ったことさえないというケースがありました。

では、採用に対するトップの介在度が低いとどうなるでしょう。まずアトラクトが弱くなります。選んでもらうことができなくなるのです。トップが出てきて「なぜ来てほしいか」「どういう活躍をしてほしいか」を語り、会社の理念や方向性などを情熱的にアピールする、候補者に直接伝えるということを昔ほどしなくなっているのではないでしょうか。トップが出てこないと、当然のごとく候補者の印象に残らず、アトラクトが弱くなり、採用確率が低下します。

次に他社に比べて採用に付随する意思決定が遅くなる、スピード感が失われるということがあります。遅くなって良いことはありません。タイミングを逸すると採用の確率は下がります。トップが関与しないと現場がそれに比例して緊張感を失う例も多く、いろいろな要因で採用が後回しにされ、それが遅延の要因になります。社員は他にもいろいろな仕事を抱えているので採用の優先順位が低くなりがちです。しかし、もし社長の指示があれば「該当者を早く採用しよう」と現場は緊張感のある動きをするようになります。トップの介在度が高いと、現場の士気も上がってくるのです。

よく採用活動を婚活になぞらえることがあります。その似て非なる点は、婚活は一定の段階になれば1対1で向き合うのが倫理的ですが、採用活動は最終段階まで1人の候補者が複数の企業を取捨選択できるということです。アトラクトが弱い、スピード感がないとなると企業の熱意が伝わらず、どんどん印象が薄れてしまいます。そうなると採用確率は低下します。このような問題を誘発しやすい以上、トップが全面的に採用に乗り出せとは言わないまでも、何らかの形で介在しないと候補者から見離される恐れがあります。思い当たる節があれば、この点は見直していただく必要があるのではないでしょうか。

以上