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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第81回
2023.01.27

経営層の器

今回のコラムを結論から申し上げると「経営陣は器を大きく」ということになります。あたりまえと言えばあたりまえのことですが、これまで以上に多種多彩な人材や組織を受け入れる努力をしなければなりません。先のコラムで取り上げたように人材の争奪戦が激しくなっているという要因はありますが、日本では確実に労働人口が減少に向かい、移民についての議論も方向性が定まらない状況です。いつもと同じように歳月を見送り、いつもと同じような活動をしていては、多くの企業がますます定形化して停滞してしまいます。若くて優秀な人材の獲得は新卒レベルから難しくなることでしょう。一方で医療の発達により平均寿命は延びています。健康寿命についてはまだまだ微妙なところですが、人が長く生きるようになったことは間違いありません。


私はシニアという言い方があまり好きではないのですが、いわゆるシニアの人材活用というものが一部でホットな話題になったことがあります。その時に企業側がどういう結論を出したかというと、次のようなネガティブなものでした。
①成長の伸びしろがなかった
②若い人とうまくやっていけないと感じた
③パフォーマンスが上がらなかった
④扱いにくかった
これらの理由で現場よりも経営者サイドが敬遠し、シニアの人材市場が活況になることはありませんでした。成果はごく一部のサービス系の職種に片寄ってしまった感があります。大手ハンバーガーチェーンが90歳を過ぎた人を雇って注目を浴びたことがありましたが、それはあくまでも例外的なものだったと思います。私は①から④の結果を見て少し違和感があり、人材側に責任が転嫁されているような気がしました。実はやはり人の活かし方の問題だと思います。多様性のある人を適材適所で上手に効果的に活用していく、そうした努力が経営サイドに不足していたという印象を持ちました。


例えば、ある金融系の企業が経験豊富なシニアの有識者を雇用し、若い人たちが敬遠する債権回収の部隊に配置し、その専門職として上手に活用してパフォーマンスを上げた実例があります。また某コンサルタント会社ではシニアを専門職として従来の人事評価制度と違う評価制度のもと、プレイヤーとして存分に腕をふるってもらうけれども、マネジメントのゾーンからは外れてもらい、共存を図って大きな成果を挙げたという報告をTESCOの顧問企業から受けています。


パフォーマンスがどうこう言いがちですが、経営陣が自分より年上で経験豊富な人を上手く活用できる自信、包容力、柔軟性などを持ち合わせることで、ある程度のことは解決してくるのではないかと思います。人材業界では「新卒は染めやすい、中途は染めにくい」などと言われていますが、中途で失敗した後に非常に若い人に理由をつけて採用や組織づくりを委ねてしまうというのも日本特有のいびつな感じがあります。


これからの時代、年齢や性別はもちろんのこと、国籍や出自なども色眼鏡で判断せず、前向きに受け入れて活用していくという意識を早急に身につけることが必要だと思います。そのために企業のビジョンやミッションを土台に、いろいろな立場の人々がどの方向に向かって走って行けばよいかというところを、経営者がビジョナリーに示していくことが重要です。経営に携わる層が自らの器を大きくしていかなければ、企業も時代に合わせて成長することができません。しかし表面的なコミュニケーションや扱いにくい人を煙たがって遠ざけることが実際のところであり、そこで機会損失が生まれたり柔軟性を欠いたりしているという事実があるならば、企業はこれからの時代に合わせた変化や修正を真剣に検討していく必要があるのではないでしょうか。


以上