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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第21回
2018.09.25

経営者から見た副業解禁の是非

政府が主導する「働き方改革実行計画」を踏まえ、法令等において副業や兼業が公式に認められるようになりました。2018年1月には厚生労働省において「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が策定され、その基本理念とともに、企業や労働者の対応、制度の構築等について規範が示されています。副業と兼業については国民の関心も高く、メディアでも頻繁に取り上げられ、そのメリットが喧伝されたのも記憶に新しいところです。今回はメディアの取り上げ方と少し視点を変え、この問題を経営者サイドがどう見ているかというお話しをしたいと思います。
 
私は仕事柄、顧問先等で多くの経営者や管理職の方々とお目にかかります。そこで副業と兼業の解禁が話題になると、それに対する肯定・否定が見事に二分されていることに気づきました。副業と兼業の解禁を肯定的に捉えた意見やメリットについてはメディアでもいろいろ紹介されているので、ここではあえて割愛し、否定的に捉えている意見に注目してみたいと思います。
 
副業と兼業の解禁に否定的な見解を持つ経営者は次のような危惧を口にします。「人はひとつの仕事(プロジェクト)を完成させて結果を出す。そして実績を積み上げていく。その積み重ねによってキャリアの可能性が広がっていく。それにつれて収入もついてくる。ひとつの仕事に集中していると『急がば回れ』もあるが着実に成長していく。しかし副業や兼業に手を出すと、仕事に対する取り組みがどうしても100%ではなくなってしまい、焦点がぼやけてしまうのではないか」
 
有能な20~30代のビジネスマンは、自分が受け取っている給料以上の成果を出し、実績を積み上げています。しかし、そういう存在ばかりではありません。最近、現場を観察していて思うのは「結果を出せない言い訳」が増えてきたことです。プロジェクトにおいて「結果よりもプロセスが大事だ」とか「数字に結びつかないが良い企画だった」などの言説に首をかしげざるを得ません。そのような風潮のもと、20~30代の最も能力開発に注力しなければならない時期に、副業や兼業を持ってさらに焦点がぼやけてしまってよいのでしょうか。副業と兼業に否定的な意見を持っている経営者の多くは、こうした基本的な仕事への取り組み方について警告を発しています。

また、会社や社員には仕事上知りえた重要事項の守秘義務があります。副業や兼業で帰属心がゆるくなった場合、意識的かどうかは別にして情報漏洩が起きる可能性も否定できません。副業や兼業のネットワークを介して情報や技術が間接的に伝わってしまうというリスクがあるのです。経営者はこうした点にも不安を感じているようです。
 
中国地方の過疎化に悩むある自治体では、まちづくりと地域活性化のために、副業で週末の土・日のみ企画業務に従事する人材を採用しました。200人に1人という狭き門を突破した優秀な人材(東京のメーカーに勤務する30代女性)が自治体の業務に新風を吹き込んでいるようです。これなどは副業として評価できる例だと思います。
 
とはいえ、そうした副業を本業の経営者や管理職がどう見ているのか、見えないところでキャリアに影響を与えないのか等は気になるところです。いずれにしても本業でも副業でも人並みはずれた成果を挙げて、周囲を納得させていくしかないのかもしれません。
 
この副業と兼業の普及促進というムーブメントが今後拡大していくのか、それともいつしかしぼんでしまうのか、現時点では予断を許さない状況にあります。今後の展開を注視していきたいと思います。