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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第100回
2024.04.12

社長をめざすために経験しておきたいポスト

この文をお読みいただいているビジネスパーソンのなかにも、転職や独立を検討されている方がいらっしゃるかと存じます。また現在勤務している会社や、希望を持って移籍した転職先で、企業人としてトップキャリアをめざしている方もおられるでしょう。言うに及ばず勤め人にとって最高峰のポストはCEO(Chief Executive Officer/最高経営責任者)およびその周辺の役職になります。昨今はCXOと書き記し、このXという文字にO、F、HR、T、Iなどのイニシャルを当てはめ、経営上重要なポストとして呼称するようになりました。企業や業種業界の文化によって違いはありますが、いくつか一般的な例を挙げると、CEO以外には次のような役職が見受けられます。
最高執行責任者 COO(Chief Operating Officer)
最高財務責任者 CFO(Chief Financial Officer)
最高人事責任者 CHRO(Chief Human Resource Officer)
最高技術責任者 CTO(Chief Technical Officer)
最高情報責任者 CIO(Chief Information Officer)
これらは代表的な役職のごく一例で、会社によっては更に必要なポストがいろいろと用意されています。ビジネスパーソンのなかには、こうした専門的かつ得意分野である役職をめざしている方が多くいらっしゃると思います。


会社の規模や業種業態によって役職の機能は千差万別である、ということは私が日頃から申し上げているところです。一般論として、この専門的かつ得意分野を持つ経営層をキャリアとして狙うにしても、凡人の一朝一夕で届かないことは明白です。そこでは数十年単位の成功を実績として積み上げていくことが求められるからです。そのため少なくとも5年から10年単位で長期的かつ戦略的にキャリアを見据えた準備をしていくことが肝要です。ここではCEOをめざしてステップアップしていく際にぜひとも経験しておきたいポストについていくつか紹介させていただこうと思います。


私ども東京エグゼクティブ・サーチが活動するヘッドハンティングの世界からビジネスシーンを眺めたとき、「このポストを戦略的に経験していると、目標に近い位置取りができ、逆にそのポストを経験していないと、チャンスを逸する結果になっている」ということが感じられます。トップに君臨するCEOはまぎれもなく会社の最高経営責任者ですが、そのCEOのもとで腕を振るうのが最高執行責任者であるCOOです。従来の経営学で申し上げれば、経営は「所有」と「執行および監視」がコーポレートガバナンス上で分離しています。取締役会を主宰し実質的に最高意思決定者となるのがCEO、そして日常のオペレーション業務を執行する最高位の存在がCOOになります。この両者の緊張関係で役割を分け合うのが望ましいとされています。1人が双方を兼務しているケースもあるので一概には言えませんが、経営理論上は分離しているほうが正解です。そしてCEOに就任する人は直前にCOOを経験していることが常識になってきました。CEOは実質上の社長であり、COOを経験してCEOに到達した人物はまぎれもなく見識を備えた実質上の社長ということになるわけです。言い方を変えればCEOをめざすということはイコールCOOをめざすことだと言っても過言ではありません。ではCOOになるには何が必要なのでしょうか。具体的に申し上げるとCFOとCHROを40歳代から50歳代前半までに経験しておくと望ましいという見解が、グローバルスタンダードのなかで主流になってきています。私たちが日々接触する監査等委員会設置企業のなかの指名委員会との協議においても、このキーワードが出現することが増えてきました。ではその中身を具体的に見てみましょう。


もともと日本の経営層は計数(数字)に弱いとグローバルでは厳しく指摘されてきました。取締役会、役員会を構成する最高意思決定機関のメンバーであっても、会社の具体的な経営状況を数値化して分析する能力がありません。また経理や財務に置き換えられる会社の数字の流れに関して専門的なトレーニングをしていないということもあり、該当する部署からの報告をそのまま鵜呑みにせざるを得ないというのが一般的になってしまっています。あえて言えばそこまで能力を求められなかったという現実があります。ですがこの10年ほどで企業はM&Aなどの敵対的買収の防衛に当事者として巻き込まれるようなケースも出てきました。経営の意思判断をするにあたって、数字に弱い会社で起きている諸問題を数値で的確に把握し、その上で対処するというレベル感が最低限求められるようにトレンドが変わってきました。CFOを経験させたうえでCOOの道を歩ませようという考え方が定着してきたことは自然なことなのかもしれません。ですから営業面では滅法強いけれど数字に極端に弱いという社長像はかなり減退してきています。だからこそ自分が数字に弱いという自覚がある方は、早めに勉強に取り組むことをお奨めしたいと思います。初歩的なことであれば日商簿記2級のようなスキルでも役に立つと思います。こういった数値の基本を独学で学ぶことは意義深いことです。またNBAの科目履修でもよいので数字に弱い方はぜひアカウンティングを自発的に学ぶように心掛けてみてください。もしかすると英語などよりも頑張っていただく価値があるかもしれません。


更に最近ではCHRO、これは最高人事責任者のことを指しますが、慢性的な人不足および急速なグローバル化が進んだことによる採用の教育評価が問題になりがちです。人事関連業務の高度化と専門化が進み、ヒューマンリソース(HR)の経営に占める重要性がグローバルスタンダードで急速に増してきました。最近、外資系のトップレベルの企業では、先ほど申し上げたCFO経験者に更にCHROを経験させる傾向が出てきています。その後にCEOに抜擢するという推奨ルートを明示する会社も増えてきました。すなわちCFOとCHROを40歳代から50歳代前半に経験しておくこと、もしくは会社からそのような抜擢を受けたということは、社長候補としてかなり有力なポジションにいるということになります。いずれにしても経理、財務、人事、これらは機会を見つけて戦略的に勉強し、部署移動の際は挙手をしてでも早めに経験しておくことがキャリア上の重要なポイントになると申し上げておきます。


まとめになりますが、社長をめざすために経験しておきたいポストは、以上に述べたような専門的な役職となります。CEOは経営管理の専門家、COOは執行と監視の専門家、CFOは経理と財務の専門家、CHROは人事の専門家ということで、これらの専門的なスキルとノウハウを自分のものにしていれば、社長への道は確たるものになることでしょう。時代の変化と業界の現状をよく観察しながら、確実にトップに向けてステップアップして行きたいものです。