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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第91回
2023.09.15

製造業の採用マーケット現況(2023年下期)

製造業に限らず採用市場はおおむね人手不足の売り手市場となり、コロナ明けの解放感も相まって著しく活況に見えます。その一方で景気はすでに踊り場にあるような印象もあります。全体的な景気に減速感が見えてきたことも無視できないかもしれません。これらの点は人材業各社で認識を同じくしているところです。そのなかで特に製造業に印象的で注視するべき動きが見られるので、かいつまんでご紹介させていただこうと思います。


製造業にとってもやや急激で過剰とされる円安ですが、その恩恵を受けて事業所や工場に国内回帰の傾向が見られるようになりました。現に採用に投入する予算も昨年や一昨年と較べると増加し、各社とも採用意欲がかなり強くなってきているようです。その一方で自動車産業などに見られるような「新技術」「新素材」といったキーワードが一斉に湧き上がってきたことにより、自社の開発・研究環境が急速に複雑になりすぎてしまった感があります。そのため、どういう人材を採用したらよいのかという判断が、人事担当レベルではついていけなくなってきているようです。これについては採用する会社側にも混乱が見受けられ、採用スペックが固められない、もしくは市場に存在していない人を存在していると仮定して採用活動をおこなってしまっている、そのようなケースがここ1~2か月で急速に増えてきています。


現場から要求される「こういう技術を持った人を採用してくれ」という要望に対し、それを検証することが非常に困難かつ複雑になってきてしまい、人事担当レベルで対応できる限度を超えていることが明白で技術的背景が理解できないわけです。しかも先に述べたように実はそういう技術を持っている人はそもそも他社には存在しなかったということもありえます。すなわち採用が空想のなかで動いてしまっているようなことになるのです。これはたとえばEVなどの分野でかなり増えているようです。いまや誰もが仮説を立証できない状況になってきているのです。


ということで製造業は人事担当が独断で採用活動を回すにはかなり荷が重くなってきています。ですから開発や技術の専門的な部門の方が、人事担当と一緒になって陣頭指揮を執っていただくことが必要になると考える次第です。逆に言えば、社内にいない専門家で卓越した技術者がいてくれたら、自社の持つ技術と重ね合わせることで新しい開発・研究が進むというテーマの絞り込みができます。そういう分析はかなり進んできているようですが、現状で他社にそうした人材が存在するかしないかという理解や判断に少々誤差が出ている面があり、その結果採用が遅延してしまうケースが見受けられ「予算はあるけれども使いきれなかった」「一生懸命に工数を割いて採用活動に注力したけれども結局採用はできなかった」というような事態が最近は見られます。これは特に製造業に顕著に見られる傾向であり、今後は更に注視が必要になる問題だと私どもは判断しています。読者のみなさまも参考にしていただき、必要であれば早めに対策に取り組むことをお奨めします。