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社 長 コ ラ ムCOLUMN

第20回
2018.08.22

外資系企業の経営者選定プログラム。

外資系のグローバル企業というと、社長や役員をスカウトやヘッドハンティングで迎え入れるイメージがあります。しかし最近はプロパーから歳月をかけて将来の経営者を育てようという傾向が見られるようになってきました。私が最近見聞した例をご紹介しようと思います。
 
例えばP&Gには伝統的に「トップはプロパーから登用する」という基本的な考え方がありました。今、他の外資系企業でもこれに追随するような会社が出はじめています。
 
B氏の例をお話ししましょう。彼は40歳を迎えたときに某外資系企業の日本法人のトップになりました。彼の場合は珍しいことに、その会社の新卒第1期生で、当然転職歴はありません。これは非常に珍しいパターンです。プロパーで勤続18年目の社長というのも珍しいですし、40代で世界有数のグローバル企業の日本法人の社長になるというのも珍しいことといえます。
 
私がB氏と初めて会ったのは、彼が29歳のときでした。営業部門にいたのですが、営業成績はプレイヤーの頃からずば抜けていました。英語力は入社したときはさほどありませんでしたが、社会人になってから毎日2時間の英語の勉強を欠かさず、見事に上達しました。非常にストイックで、自己管理が徹底していて、将来を見据えた自分への投資や努力をしていることが印象的でした。
 
彼はプレイヤーとして営業の成績が高かったことはもちろんですが、本国の本社が考える将来のグローバルな経営者候補として、エリート選定プログラムのメンバーに入っていたようです。このメンバーに入れるのは全社員の1%といわれており、彼はこの1%の中にノミネートされていたのです。実はこの選定プログラムについては厳しい箝口令が敷かれており、リストアップされた本人はおろか、日本人は誰も知らされていないというトップシークレットでした。つまり本国の本社にしかデータベースがない情報なのです。
 
このように各国の法人トップとして期待される人材が全世界から集められ、リストアップされるのですが、この会社の場合は本人からの希望は一切関係なく、すべて本国の本社がその人たち一人ひとりのために、どういう部門で何の経験をさせるかカリキュラムを組み立てるのだそうです。ですから、この会社の場合は受け身で仕事をこなしていくと道が開かれるということになります。
 
これを「楽だ」と考えるか、「自分で選べない」と考えるかは人それぞれでしょうが、この会社の人事戦略は以前から進歩的でした。キーワードは「ゼネラリスト」。外資系企業のなかでは、営業、購買、開発、人事など、外資にしては珍しくいろいろなセクションの経験を積ませる方針があります。
 
この会社ではセクションを異動するときのミッションが明確に定められていて、人事の基本は「ふるい落とし」です。業績が評価されるのではなく、ミスをした者が消えていきます。これをクリアできなければアウトですよ、というように次々と壁が迫ってきます。それを乗り越えていくと本人が知らないうちにキャリアがアップしていきます。
 
経営者選定プログラムの存在は公表されていなかったのですが、彼が34歳のときに、ごく一部のメンバーが本国に集められ、3か月間缶詰めになって研修を受けることになりました。この時に社内で「ここに選ばれた人たちの背景にはひょっとすると何らかの意図があるのではないか」と噂になったそうです。その2~3年後に彼らが登用され、以後はヘッドハンティング等で人材を登用するのは必要最小限にし、この会社のカルチャ―やケミストリーを熟知した優秀な人物を各国の主要なポジションに登用するということを、会社は内外に明らかにしたのです。まさにこの第1期生にあたるのが彼でした。
 
考えてみれば、これはかつて日本の大企業で見られたやり方です。日本の一世代前の経営者はゼネラリストであることが多く、役員会等においてどのセクションとも共通言語でコミュニケーションが取れました。これまで外資系企業はスペシャリスト志向が強かったのですが、この会社がゼネラリストを育成して経営者にしたということは、他の外資系グローバル企業も追随することが考えられ、今後とも注目してゆきたいと思います。