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採用難易度:5.0

採用難易度の見方について

2018.06.20 更新分

業界分析レポート(自動車・機械・重電業界動向)

REPORT

自動車や機械、重電業界は多くの産業と関わりがあり、国内産業の中では売上や雇用者数ともに最大規模となります。その一方で歴史ある重厚長大産業としては、近年変化の潮流も激しく、合併やM&A等様々な合従連衡の動きも目立つ業界です。

今回は自動車や機械、重電業界の転職求人市場の状況を深掘し、幾つかの視点に分けて考えてみます。

 

全体を俯瞰しつつ企業側の動向に焦点を当てると、この業界は国内の生産工場閉鎖等の一部のネガティブな報道を除けば、売上高の伸長や高い営業利益率等、近年好況が続いています。

この好況の影響を受け、同業界は慢性的に人材不足が続き、空前の売り手市場であることは否定できない事実です。特に技術系の専門職種や、プロジェクトマネージャーは、一社につき数十名以上のポジションを埋めることができないという惨状が常態化しています。

この最も大きな原因は、採用の手法が旧態然としており、近年の大きな変化に適切な対応ができていないことが挙げられます。

同業界のメインプレイヤーと目される企業は歴史も長く、数千、数万を超える従業員を既に抱えており、その待遇テーブルは厳格に細分化されています。このため先端技術を有する稀有な人材に対しても、その待遇テーブルの枠を超える破格のオファーを出すことは、制度上困難が伴います。

逆に海外の競合企業は、現職の年収を問わず、獲得に必要な高額なオファーを出すことに躊躇がありません。もちろん、待遇だけで候補者の意思決定が行われるだけではありませんが、オファーの乖離があまりにも広がると、候補者獲得がより困難になるのは明白です。

上記の問題は以前から指摘されていますが、以下2つの点が阻害理由となり、柔軟性のある解決策を施すことが難しい状況が続いています。

 

一つは近年大企業を中心に進められてきた事業部制、カンパニー制の影響によるものです。少し前までは、即戦力としてではなく、先端技術に知見をもつユニーク人材を抱えて5年、10年かけて大きな化学反応や、新規事業の創出を期待するというケースも散見されました。

ただ事業部制がメジャーな制度となった現在、同制度を導入している企業では、人事の裁量権や予算も事業部に紐付けられています。これにより現場に近い判断を素早く行うことができるというメリットも多い一方で、短期的な損益も事業部の責任となるため、現在開発に取り組んでいるテーマの即戦力人材の採用に注力することが求められます。このため人工知能やIOT等、今はまだ明確な開発計画はないが、いずれ必要になる時が来ると予想される人材に、事業部が責任を持って破格のオファーをすることは、組織制度の点から困難となっています。

 

もう一つの理由は、人事部門の変化への対応の遅れです。特に外部からの採用に関してはこの点がより目立ちがちです。技術系の人材に求められる知見は、以前にもまして専門的になり、細分化や変化を続けています。自社に必要な人材かどうかを見極めるための現在進行系の専門知識を、この業界の人事部門が保持しているとは考えにくい状況が散見されます。

このことは人材の母集団の動向や、労働市場の現状を把握できていないこととも同義であり、高額なオファーが求められる人材獲得の大きな障害となっています。

 

上記の理由により、同業界の採用難易度はとても高いと言えるでしょう。そのなかでも特に困難な採用ポジションに関して、弊社にコンサルティングの相談、依頼がくることも最近は少なくありません。

仮に我々がサポートする場合は、例えば採用難易度5つにわけて、レポーティングすることを初めに行います。採用難易度やそのポジションの重要性、採用までの時間等、様々なエレメントを総合的に判断し、採用難易度の高いケースの場合は、オファーの限度額やインセンティブ等、どれだけのプレミアムが獲得に必要であるかのコンセンサスを共有する必要があります。

このコンセンサスは人事部の裁量を超えることも多いため、より高い責任をもつ方との重ねての協議が必要となります。このプレミアムの折り合いがつかない場合は、仮にそのままサーチを続け最終フェーズまで候補者を届けたとしても、採用に至ることは難しく、貴重な時間を浪費してしまうことにもなりかねません。

 

また一方の候補者側も、同業界の独特な特徴を把握する必要があると思われます。

基本的には上記のような売り手市場が続いており、中堅企業から大手企業への転職が多いことも、この業界の特徴の一つです。それはAIやEV等の専門的な研究開発系職種に留まりません。

例えば中堅企業で、厳しい品質納入基準や生産管理までの工程を、広範囲にマネジメントしている人材に対して、大手企業の採用の意欲は旺盛です。業績の良い中堅企業には、全体を俯瞰しバランスよくプロジェクトを推進できるミドル層が多いとの定評もあります。そのような人材を自社に迎えることで、人材を補充すると同時に部門全体の活性化に繋がるのではないかと大手企業は強い期待を持っています。このような人材に関して年齢はあまり問われず、本人の予想以上に様々な選択肢があると思われます。

 

ただこの業界は近年競争が激しく、M&Aや合併等が盛んに行われています。ブランド単位での売却も多く、馴染みのあるブランドでも新興国系企業の所有となっているケースが珍しくありません。そのようなケースに際しては、国内生産の開発や製造の拠点はかなり整理され、新興国系企業の人材も混じった、多国籍な人員構成にリストラクチャリングされるトレンドが継続しています。

また逆に日系企業が攻勢をかけ、海外へ企業買収や進出をする際に、以前は日本人を駐在させるような重要なポジションにも、現地の優れた人材を採用するケースも目立ってきています。大手自動車、機械等の北米やアジア法人のトップが日本人ではないことも、一部では慣例化し始めています。

上記のように業界の規模が膨張し、人材不足が慢性化しているとはいえ、採用は日本人であるかどうかは問われておりません。日本国内の拠点や日系企業の中でも採用の競合相手がグローバル化しており、特に45歳以上のミドルからシニア層は、経験経歴によっては思いの他オファーを獲得するために苦戦を強いられることを認識したほうが良いでしょう。

 

このように同業界の採用動向を企業側、候補者側からの視点を見てきましたが、どちらも他の業界以上に優勝劣敗が激しいという特徴が見受けられます。まずは自らを再認識すると共に、市場のニーズを見極めることが重要だと思われます。また数年単位ではなく、短い場合は半年や四半期でもその動向が急変することがあるため、常に業界動向のアップデートを続けることを強くお勧め致します。

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