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業界動向INDUSTRY TREND

IT・通信IT · COMMUNICATION

採用難易度:5.0

採用難易度の見方について

2021.05.31 更新分

業界分析レポート(IT業界)

REPORT

ITは今や使わずに成り立つ産業が見当たらないほど、どの産業にも使われている技術の1つです。最近ではそのITの中でも特に、通信技術を使ってコミュニケーションをとるICT(情報通信技術)の活用が進んでいます。
日本における情報サービス産業は約60年前にスタートしたばかりですが、今となっては国産業内で最大規模のビジネスといわれるまでの成長を見せています。この結果を見ると、この60年間で1,2を争うほど劇的な変化を見せた業界といえるでしょう。
今回はそんな成長著しいIT業界の転職求人市場の現状、そして今後の採用動向を考察します。

 

■IT業界の将来性

総務省の「令和2年版情報通信白書(ICT分野の基本データ)」によると、IT(ICT)産業の2018年度の名目国内生産額は99.1兆円と、国産業内で最大規模のビジネスであることがわかります。
また、ITバブルが弾けた2001年からは情報通信産業の国内生産額が減少傾向にあったものの、その後5年程度で復調の兆しを見せ始めました。再度2008年の大不況で大きく減少し、その後また5年程度で復調と同じような変遷を辿っています。2018年時点のグラフを見ると、実質国内生産額は2018年時点で101.4兆円と、ITバブルと言われている2000年当時よりも増加していることが見て取れます。

ITと既存産業を組み合わせたX-techや「2025年の崖」対策でDX(Digital Transformation)に取り組む企業も増えるなど、ITを使った取り組みは多数出てきており、今後も伸びていくことは間違いない業界といえるでしょう。
それ以外にも、これからのビジネスにとって必要なテクノロジーだと近年注目を集めている『DARQ』がビジネスを牽引する存在になるといわれています。
DARQは分散型台帳技術・ブロックチェーン(distributed ledgers)、AI(artificial intelligence)、拡張・強化現実(extended reality)、量子コンピューティング(quantum computing)の4つの技術の頭文字を取った言葉です。
DARQの技術は既にさまざまな企業が導入しており、例えばAIによる採用マッチング支援、ブロックチェーン技術による入力データの大幅削減、AR技術による技術ノウハウの伝承、量子コンピューティング技術による広告マッチングなどがあります。これらはほんの一例ですが、DARQ技術の活用シーンが多様に存在することがわかります。

このように、DARQなど新たに注目されている技術や、既存の技術を生かした取り組みX-tech・DXなどが注目されていることを考えると、IT業界の未来は明るいといえるでしょう。

 

・IT人材の雇用の変化

ここで、そんなIT業界で求められるIT人材の雇用の変化について見てみましょう。
総務省の「令和2年版情報通信白書(ICT分野の基本データ)」の付加価値誘発額を見ると、2000年時点から2018年に至るまで順調に伸びています。しかし、雇用誘発数を見てみると、2000年時点が992.5万人に対し、2018年時点で859.0万人と大きく減少していることがわかります。

また、IT企業がIT人材の「質」の不足を強く感じるようになってきていることもわかります。このように雇用誘発数も質にも課題を抱えるIT市場に身を置くIT人材が、今後どういったキャリアを目指せば常に需要がある状態をキープできるのか、世界のIT業界の動きを踏まえてご紹介します。

※出典:「令和2年版情報通信白書(ICT分野の基本データ)」(総務省)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/pdf/n5100000.pdf

 

■IT業界の動向

現状、世界と日本のIT業界を比較すると、世界は価値創出型の仕事、日本は受託開発型の仕事を主にしているという違いがあります。

GAFAが世界経済を牽引しているといわれていますが、それはIT業界でも同じです。さまざまな業界で使われているクラウド、マーケティングなどに使う分析DBツールなど含めたプラットフォームを提供しているのもGoogleやAmazonです。

日本にはこのようなプラットフォーマーがおらず、大手IT企業であっても受託開発がメインとなっています。そこから二次請け・三次請けという構造となっており、上流に携わるのは一次請けのSIerのみであることが多いです。

また、開発するシステムも顧客からの指示通りで、主に業務効率化目的のシステム開発が多い傾向にあり、あまり価値を創出するような事業に関わりが持てていないという現状があります。今後は世界的なトレンドに沿って日本でも価値創出型の仕事が求められるようになっていくでしょうし、そもそも日本は人口減で内需が減る可能性が高いため、積極的にグローバル案件を取りに行き、価値創出型の仕事のニーズも増えてくると考えられます。

このように、今後価値創出型の仕事が求められる可能性が高いことを考えると、単に受託開発の仕事をし続けるキャリアには不安が残ります。

 

■IT業界の採用動向

価値創出型・先進的な技術を使った開発がメインとなっていく可能性の高いこれからのIT業界で、企業側、候補者側が抱えうる問題についてご紹介します。

 

◯企業側の問題
IT業界の企業が抱える問題としては、下記のようなものがあります。

1.価値創出型の仕事を目指す人材の海外流出
2.DARQなどの先進的技術を高いレベルで扱える人材の不足
3.技術力・経営観点の両方を持つ人材の不足
4.(2や3に該当する)高レベルな人材に見合う待遇の準備
5.(2や3に該当する)高レベル人材が少数のため、企業側で育成が必要

1.価値創出型の仕事を目指す人材の海外流出
これまでにも受託が多い日本の仕事では満足できず、価値創出型の仕事を求める人材が海外に流出してしまっている可能性が高いです。今後それを引き止めるためには、海外並みに高い水準の待遇や働く魅力を持った企業になることが必要です。

2.DARQなどの先進的技術を高いレベルで扱える人材の不足
DARQは先進的な技術であるため、各企業が求めるような高いレベルで技術を扱える人があまりおらず、開発経験も乏しい可能性が高いです。

3.技術力・経営観点の両方を持つ人材の不足
仮にDARQのような先進的な技術力を持っていたとしても、経営観点を備えていない人が多いため、価値創出型の仕事をクライアントから求められてもできないことが大きな問題です。

4.(2や3に該当する)高レベルな人材に見合う待遇の準備

5.(2や3に該当する)高レベル人材が少数のため、企業側で育成が必要
これらの状況を踏まえると、高レベルな人材に見合う待遇の準備や、市場全体で不足している高レベルな人材になってもらうため、企業側で高レベル人材になれるような育成が必要になってくるでしょう。

企業側は高レベルな人材に見合う待遇や働き方を提供できる準備を整えること、そして企業側でも先進的な技術の育成や経営観点の育成ができるよう、体制づくりが欠かせなくなります。

 

1から5の各論でご説明致しましたが、総論としてIT分野での採用は、領域を広げ地域的にも拡大が続いております。このような状況にも関わらず、海外企業と国内企業で重ねることが可能なキャリア及びスキルの差は大きなものがあり、待遇もかなりの開きがあります。
このため優れたスキルセット、経験を有している方ですと海外企業からの引き合いも強く、採用に競り負ける局面が多々見受けられます。結果として国内企業が獲得できた人材は、理想的な候補者ではないことが多いようです。この人材の成長を促す環境が整っていることも少なく、数年立って双方が採用のミスマッチを感じ、退職される方もすくなくありません。この分野の優れた候補者は、独立という第3の選択肢もあるため、確実な採用を目指す場合は、思い切った待遇や環境構築の予算設定が必要です。
とはいえ国内の企業ですと、IT人材だけに別格の待遇や環境を用意することが難しく、結果として長期に渡り、同分野の人材不足を感じ続けている企業は相当あるかと思います。上記で挙げた要因は今後より拡大する可能性も高く、IT人材の採用に関しては、大きな経営判断が必要かもしれません。

 

◯候補者の効果的なキャリア形成
候補者の側面から考えると、これからのIT分野で重用される人材になるために、下記2つの転職の軸を検討することをおすすめします。

1.ジェネラリスト: IT推進の能力を鍛えて中堅企業のIT推進責任者へ
2.スペシャリスト: エンジニア能力を鍛えて外資系へ

具体的に1・2それぞれ、どのようなキャリアが考えられるかご説明したいと思います。

1の場合は、技術に関する知識と経営観点を鍛え、推進責任者としてキャリアを構築することが重要です。「2025年の壁」までにDX推進をという政府目標もあるため、DX推進責任者、あるいはIT全体の推進責任者として採用される道が考えられます。この場合、様々な業界からの引き合いも多く、若手はかなりの選択肢から自らのキャリアを選ぶことが可能です。またミドルレイヤー以降についても、他業界と比較して豊富な選択肢があるかと思います。一見ITとは関係ないような業界や地方の企業でも、先端の知見を持つIT責任者を置きたいと思っている企業が多いことに、驚かれるかもしれません。
ただそれぞれの企業の持つアナログなネットワーク、データ、戦略のIT化は、技術面の問題だけではなく、各部門とのネゴシエーションや根回し、予算折衝等泥臭いと思われる能力も求められます。このキャリアを選択される場合は、ITの豊富な知見に加え、それを推進するための日本流のビジネス力の両立が求められるかと思われます。
待遇面に関して若手はやや現状よりプレミアが付加される可能性が多いようですが、ミドルレイヤーは各社様々です。ビジネス力を買われマネジメント層としての採用の場合はある程度のプレミアが見込まれるでしょう。どちらのケースもですが、事業会社のIT担当ということになると、ワークライフバランスは大幅に改善されるケースが多いようです。もちろんケースバイケースではありますが、例えばメーカーであれば、商品の研究開発、国内外の営業といった納期やノルマを伴う主戦場から、一歩後方でITによる支援を担うことになりますので、期限や必達のタスクというプレッシャーからはある程度距離をおいて働くことが可能です。この場合、自らを律して先端の技術の学びを継続しないと、長期的には自らがリプレイスの対象ともなりかねませんので、この点はご注意ください。

2の場合は、エンジニア能力を鍛えて外資系企業に行き、価値創出型の仕事を身につける、あるいは、先進的な技術を活用しようとしている国内企業でプロジェクトに入り、先進的な技術を身につけ実績を積んで、外資系企業で先進的な技術の活用を行うなどが考えられます。この選択肢を選んだ場合は、まさにグローバルで現在進行系のIT技術の開発、カスタマイズ、メンテナンス、システムセールスに携わることができます。
待遇面に関しても、日本の待遇と外資系の待遇レンジの開きが年々拡大していることから、参加時に大きなプレミアを獲得するケースも散見されます。また良好な成果を継続した場合も、日本企業では経営側でなければありえない待遇やポジションを獲得することも可能です。ただ、雇用の安定という点ではやはりリスクは少なくはありません。また先端技術を学び続けると共に、ポジションの上昇を考える場合は、語学力に関しての修練もまた必要です。このキャリアの選択肢を選んだ場合は、終生学びが必須ですので、その覚悟は何よりも必要となります。

今後のIT業界では、ジェネラリスト・スペシャリストを問わず、新たな価値創出ができる人材かどうかが重要です。価値創出型のスキルを身につけるためには、受託開発でも言われたとおりにやるだけではなく、「顧客が本当に抱えている課題を解決するためにはこれをやるべき」といえるほどの知識量を持って調査を行うこと。自主的に新しい技術を習得して、常により良いものを提案・提供できるよう努力を重ねることが必要です。

 

このように、IT業界の将来性、そして採用動向を企業側・候補者側の視点で見てきました。急速に成長を見せる同業界では、トレンドの移り変わりも早く、いかにキャッチアップするかがビジネスの明暗を分けることも多いです。

企業側はいかに早く新しい技術を使ったビジネスをリリースし、エンドユーザーに価値を提供するか、候補者側は経営観点を鍛えて企業に貢献し、トレンドを押さえた技術習得をしてキャリアを描くかが重要です。

また、業界をまたいで活躍できるIT業界では、数ヶ月単位でも潮目が変わる可能性があります。世の中の流れを注視し、常に新しい情報を耳に入れるようにすることを強くお勧め致します。

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